第12話 襲撃を楽しむ
私のジョブ選択も終わり、日も傾いてきたので今日は解散することになり、私達は今馬車の中にいる。
私に興味があるというミシェルさんにより、私は後日魔法の特訓を受けさせてもらにう事になり、またはやいうちに彼らとは会うことになるだろう。
「そう言えば、リズは魔法が使えるの？」
ふと前に座っているリズに声をかける。
もしやこのメイドさんはバンバン魔法を撃ちまくって敵と戦ったりするのだろうか。
私にいきなり話しかけられ驚いたのか少し目を見開き答える。
「もちろん使えますよ。
この国では成人と同時に戸籍や適正魔法を登録することになっているんです。
火や水に精通した適正なら生活の中でも日常的に魔法は使われているものですよ。」
「魔法って誰でも使えるようなものなの？
私がいた世界には魔法が存在していなかったから常識が良くわからなくて…」
リズは驚いたように私の問に答える。
「はい。中には使えない方も居られるようですが大体は使えます。
魔法のない生活なんて想像できません…
そう考えるとこの世界は魔法で溢れているんですね！
実際、今乗っているこの馬車も魔力によって守られているのですよ。」
「そ、そうなの？」
全く気づかなかった…
すぐ横の窓に掛かっているカーテンを少しめくり街中の様子を伺うと、確かにそこかしこで魔法が飛び交っている。
火魔法を使って料理を作り提供している屋台や、大道芸のような水魔法を使った演舞など、様々な場面で魔法は活用されているようだ。
私はリズへと視線を戻し話を続ける。
「リズも魔法が使えるなら何の魔法の適性があるの？」
「それはですね…」
『………!!』
ドンッッ…という音が馬車に響いた。
「何事ですか!?」
リズが運転手に様子を聞いている間に私はカーテンの隙間から外の様子を確認する。
一見先程の町中と同じように見えるが、馬車を囲う様にローブを羽織った人物が数名いる。
これは…襲撃…！
「レン様!!」
名前を呼ばれ、反射的にリズの方を向く。
「このような街中なら衛兵が来るのも時間の問題でしょう。
私は衛兵が来るまでの時間を繋ぎますので、レン様は馬車の中でお待ち下さい。ここの中ならば加護があるので敵も手を出せません。」
「それだと、リズが…」
「私なら大丈夫ですよ。
レン様にカッコいいところたくさん見せて差し上げます。」
ニコッと笑い馬車からリズが降りていく。
私がその姿を追い、窓から外を覗くと…
『ファイアーランスッッ』
リズが叫びローブを被った人物に手を向けると、細長い火の矢が相手の肩を貫く。
「グッッ…」
『ファイアーウィップ！』
相手が怯んだすきに間髪入れずにリズが火の縄で相手を縛り付ける。
だが、仲間がひとりやられたところで怯むような相手ではなくリズの背後からナイフで襲おうとするものや、正面から魔法を放とうとしているものなど全員でリズを狙っていた。
「危ない!」
そう私が叫んだのもつかの間、リズはまず、背後から迫ってくる敵を手刀ではたき落とし、正面にいる数人の敵に火の矢を正確に当てていく。
あっという間に全員倒してしまった…
丁度良いタイミングで衛兵が到着し、ローブの人たちを縄で縛り、連れて行く。
彼らは最後まで何も喋らずに、ただただ黙って衛兵の指示に従っていた。
まるで、自分の意見が無いかのように。
私が不思議に思っていると、衛兵からの事情聴取が終わり、リズが戻ってきた。
「レン様、お怪我はありませんか？
早く帰って旦那様やアルフレッド様を安心させてあげなくては…」
「私の心配よりもあなたは大丈夫なの？
私はリズに守ってもらったから平気だけど…」
リズは少し驚きながらもにこりと笑い、
「全然、大丈夫ですよ。
さあ、帰りましょう。」
と、運転手に指示を出し馬車に乗り込んだ。
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