第11話 ジョブ選択を楽しむ

 私がギルドカードのことを見終えたことを確認し、姐さんが話を進める。


 「あとやることはジョブを決めることかしら。

 アナタの適正魔法とステータスをから考えて初期のジョブを決めるのだけれど…


 実はアナタの魔法の適性が全属性あるのよね。」


 ?


 それってどういうこと?


 「この世界には五大属性とそこから分岐していったものがあるのだけれど、アナタはそのすべての魔法の適性があるの。」


 「それって…

 やっぱり凄いことなんですか?」


 その時、この執務室に新たな来訪者が現れた。


 それは…


 「凄いなんてものじゃない。

 彼女には才能がある。」


 白く長い髪を揺らしながら魔法使いのローブのようなものを羽織り、頭には小さなベレー帽を被った美しい人が入ってきた。


 「アラ、もう戻っていたの?」


 驚いたように姐さんがその人に声をかける。


 「ああ。

 新しく見つかった遺跡の調査に行っていただけだから思っていたよりも早く帰れたんだ。


 アルフレッド様の婚約者様がいらっしゃると聞いて来たのだけど、丁度良いタイミングだったようだね。」


 と、話をしながらヒラリと体をこちらへ向けながら私の前に膝をつく。


 「お初にお目にかかります。

 僕は、魔法庁で大臣をしております"ミシェル・ロックハート"と申します。

 以後お見知りおきを。」


 "ロックハート"…

 何処かで聞いたような…


 少し悩み、正面にいる姐さんの顔をちらりと見る。


 「あっ!もしかして姐さんと兄弟とか…」


 私は思いついた結論を2人に問いかけると…


 「ああ。

 アンドリューは僕の可愛い弟さ。」


 やっぱり!

 そうだと思ったんだよ。


 でもまさかこんなにゴツい人にこんなに可愛らしいがいたのか…


 世の中も不思議なことがあるものだ。


 「あっ…

 そう言えば私の自己紹介がまだでしたね。」


 私は大切なことを思い出し、ミシェルさんへ身体を向ける。


 「初めまして。

 レン・イヌキといいます。

 よろしくお願いします。」


 簡単な自己紹介をすると、ミシェルさんがニコッと笑いかけてくれた。


 「アラ、美味しそうなくらい可愛い子。

 アルフレッド様のものじゃなければ僕がもらっていたのに。」


 「は…ははは…」


 流石兄弟といったところか。


 あなた弟さんと同じこと言ってますよ~


 見た目にどんだけ差があっても血は繋がっているってことね…


 僕っ娘の姉とマッチョオネエの弟…



 「そんなことより今は貴方よ。」


 話題を切り替えミシェルさんが話を始める。


 「貴方一体何者なの?

 適正魔法は普通なら一人一つ。

 多くても二つなのに…」


 「あっ…えーっと…」


 私が言葉に詰まっているところに姐さんが代わりに説明してくれた。


 「実はそのことなのだけれど、

 レンちゃんは異世界人なの。


 その影響だと思うのだけれど…」


 この言葉を聞きミシェルはなっとくしたように


 「やっぱり。そうだと思ってたんだ。

 全属性に適性を持っているなんて人間かどうか疑うほどだからな。」


 と、ミシェルは姐さんと会話をし、腕を組み考えているような仕草をしながら何かをブツブツと言い始めた。


 「はぁ…

 アナタは魔法のことになると周りを見えなくなる癖やめたほうが良いわよ。


 レンちゃんとリズちゃんが困っているでしょ。」


 ……


 「とりあえずアレのことは置いといて、アナタのジョブを決めましょう。」


 実の兄弟にアレって…


 って、そんなことよりとうとう来たか。


 「はい!そうですね。

 どうやって決めるのでしょうか?」


 「ひとまずアナタは基礎となるジョブの中から好きなものを選んでもらうわ。

 種類は、

 剣士、戦士、弓使い、魔道士、僧侶かしら。

 まあ、オススメは魔道士だけれどアナタの好きなものにしてもいいと思うわよ。」


 そうだな…

 ステータスも魔力が高めって言ってたし、適正魔法のこともあったからな…


 それに、ミシェルの目が怖い。


 「そうですね。では私は魔道士で。

 魔法も使ってみたいですし。」


 実際、本音はこっちだけどね。


 「そう。

 それならジョブ変更の方法を教えるわね。

 まず、ギルドカードを出して頂戴。」


 「はい。」


 私は姐さんの目の前にギルドカードを差し出す。


 「そこの名前の下の何も書いていない空欄を触ってみて。」


 確かに私のギルドカードには名前の下に空白がある。


 そこを軽く触ってみると、カードの画面が変わった。


 「うわっ」


 「そこの画面ではアナタが今なれるジョブの名前が並んでいるの。

 試しに魔道士という言葉を探して、そこを触ってみて。」


 まだ私がなれるジョブは少ないので魔道士という言葉はすぐに見つかった。


 私言われた通りに触る。


 するとカードが淡く光り始め、すぐにその光は収まった。


 カードを確認すると、画面はもとに戻っており、代わりに新たな言葉が追加されていた。


 レン・イヌキ 魔道士 レベル1


 おお~


 なんか少し成長した気分。


 「それでアナタは魔道士として認められたことになったわ。」


 「はい!ありがとうございます。」


 一つ冒険者に近づけたような気がして嬉しかった。

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