第4話 政略結婚を楽しむ
「それで、いきなりだが頼みがある。
私の息子と婚姻を結んで欲しいのだ。」
「え?いや…あの…え?」
「いきなりの話で驚くのも無理はないだろう。"アルフレッド"は居るか?」
「はい。お呼びして参ります。」
護衛騎士の一人が私の後ろにある大きな扉から消えていき、扉の閉まる音が部屋の中に響き渡った。
結婚ってどういうこと?
私はまだ16歳だから結婚なんて出来ないよ?
怖い。
私が恐怖に体を震わせるのと同時に扉の開く音がした。
それと同時に爽やかな声が、震える私の耳を貫いた。
「父上。今参りました。」
「ああ。アルフレッド。お前もこの話を聞いていけ。お前に関わる事だからな。
レン殿。今入ってきた者が私の息子であるアルフレッドだ。」
王に声をかけられ、わけが分からず勢いよく振り返ると、そこには…
私とあまり変わらないくらいの年齢の好青年がいた。
短く切った金髪を爽やかになびかせている。
その姿を一目見ると目が離せなくなるような。
そんな雰囲気を纏っていた。
私を現実に引き戻したのは王様の言葉だった。
「アルフレッド。お前にはそこにおられるレン・イヌキ殿と結婚して欲しいのだ。」
そうだった。
私はこの人との結婚を申し込まれていたんだ。
でもイヤだよね?断るよね?
と思いつつ、後ろを振り向くと…
「はい。わかりました。父上。」
だよね。そうなるよね。
政略結婚なんて王族や貴族じゃ当たり前だよね…
「どうだね。レン殿?うちのアルフレッドと結婚してくれさいすればどんな援助も惜しまない。ワシに出来ることなら何でもしよう。」
どうしよう…結婚はまあ置いといて、援助をしてくれるのはとても魅力的な提案だ。
私は今一文無しだし、この世界の事も何もわかっていない。
ここで王様に見捨てられたら本当に終わりだ。
「レン。」
後ろからの呼ぶ声に反射的に振り返ると…
「私と、結婚していただきたい。」
何と、私の手を取り跪いているではないか!
「ちょっと。やめてください!」
「やめない。貴方が認めてくれるまでは。」
この家族、私のことを確実に手に入れようとしてる。
目が本気だ…
流石にこの状況は恥ずかしすぎる…
もう…無理…
「わかりましたっ。分かったから離してください!」
こう伝えると王子は立ち上がり、私の手を握り直した。
「ありがとう。レン。」
いや…だから離して…
この声を音にする前に…
「おめでとう!アルフレッド。我が息子よ!」
「流石私の子ね…おめでとう。アルフレッド。」
「おめでとうございます!アルフレッド様!」
「ありがとう。父上。母上。みんな。」
王様、王妃様、部屋に元々いたものから、扉から入ってきたものまで。
大勢の人々に囲まれ、祝われ…
いや、怖いよ。
あんたもありがとうじゃ無いよ…
政略結婚だよ?
………
ひとまず、今日は休んで明日に、詳しい話をすることになった。
出された食事を味も分からぬまま口に入れ、客人用のフカフカベットに潜り込んだ。
今日はもう寝よう。
これは夢だったのかもしれない。
明日は明日の自分に任せよう…
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