第2話 人との交流を楽しむ
「はぁ…どうしてこうなったんだろう…」
私は今、光の届かない地下にある部屋に大勢の兵士に囲まれ幽閉されていた。
時は数刻前に遡る…
………
「君、ギルドカードは?カード持ってないなら入国料金払ってね。」
これは、言葉が通じたことに喜んでいる暇は…ない感じだね。
"ギルドカード"?
確かに異世界に行ったらギルド登録とかしてみたいとは思ってたよ?
でも流石に展開早くない?
まだ街に入って無いからそんなもの欲しくても貰えないけど…
「早くしてくれないか?後ろにまだたくさん人いるし、こっちも仕事なんだよ。早くしてくれないと衛兵呼ぶからね。」
ヤバい…
何か物騒なこと言ってる気がする…
もしかしてこの世界って異世界人に厳しい感じ?
いや。こんなとこで諦めてたまるか!
確か制服のポケットの中に…
「あった!私の生命線!」
お母さんがいざというときに使えと言ってブレザーの中に忍ばせていた千円札がこんな時に役に立つとは!
お母さんありがとう!
と、天に祈りながら門番にブツを差し出すと…
「何だ!この紙切れは!私を侮辱しているのか!」
と言いながら私の千円札を破り捨てるではないか!
「私の千円札がっ…」
だよね。日本円なんて異世界で使えるわけないよね。
何で私はあの時冷静になれなかったのか…
言葉が通じるからお金もいけるかも?とか思ったりしないよね?普通は。
「もういい。衛兵を呼ぶからここで大人しくしていろ!おい。こいつを捕らえておけ。」
門番の呼びかけとともに奥に控えていたと思われる数人のガタイのいい男たちが私を捕らえた。
え?こんなスライムにも勝てないようなか弱い少女にそんな何人も人員を割く?
それともこの人たちこれ以外に仕事がないの?
他に私みたいのがいないから…
そんなことを思っていたら門番が呼んだ衛兵が来たようだ。
何かよく聞こえなかったが門にいた兵と今来た衛兵が少し言葉を交わしあったあと、私は衛兵に引き渡された。
腕をロープできつく縛られ、馬車に乗せられた。
駐屯所のような場所に連れて行かれるのだろうか…
そんなことを考えていたら、正面に座っていた
「君、どこから来たの?」
と聞かれても…
異世界から来たとは言えないし…
「ひっ…東の…端の方かも?」
日本町のような場所は異世界では東の方にあると決まっているようなものだ。
これでこの話題が終わってくれるといいんだけど…
「何を馬鹿なことを言っているんだ。東の端は魔王がいる魔界しかないぞ?」
そうか…この世界の日本町は東には無いのか…
ていうかこの世界って魔界とかあるんだ!
もしかして私って勇者の素質あったりする?
「まあいい。次の質問ね。君の名前、年齢、適正魔法、所持スキル、ジョブは…平民でいいか?」
え?
私の聞き間違いじゃなければ今魔法って言ったよね?
あと、スキルとジョブ…
「剣と魔法の異世界来たぁーーー!」
「おっ、おい。大丈夫か?やはりここに来る前に頭を強く打ったとか…」
ヤバいヤバい頭のおかしい人だとおもわれてしまう。
ここは大人しく答えないと。
「えっと、名前は犬木 恋です。年齢は16歳で、魔法はわかりません。あとスキルとジョブも。」
これでいいのか?
私がゆっくりと顔を上げ、正面に座っている衛兵の顔を覗くと…
衛兵さんが哀れんだ視線をこちらに向けてきている…
なにか間違えた?
私、元々この世界の常識とか知らないから。
ひとまずその目やめて。
見つめて来ないで。
「ああ、もういい。レックが言っていた通り尋問しても意味がない。言葉は通じるんだけどな…」
そんな頭がおかしい人みたいに扱わないで?
それと、『レック』?
私そんな人知らないけど?
あっ!もしかしてあの門番さん?
そっか。なんか親しげに話してたもんね。
私、不当な扱い受けてない?
どこに行っても私は頭がおかしい人扱いなの?
どれもこれもレックのせいだよ。
レックめ!
「おい。少しいいか?」
「はい?」
どうしたの?
もしかして私を人間扱いしたくなった?
「お前の名前珍しいな。イヌキなんて男の名前みたいだ。」
「え?名前はレンですけど…」
「何を言ってるんだ。お前はイヌキ・レンと名乗ったではないか。」
あっ。もしかしてこの世界って姓名が日本と逆なの?
「ごめんなさい。もしかしたらレン・イヌキだったかもしれないです…」
「はぁ…自分の名前すら言えないとは…これは重症だな。」
「えっ、あっちょっと…」
「いい。駐屯所に行けばすべてわかる話だ。」
あっ。やっぱり駐屯所行くんだ。
行けばすべてわかるってそんなに凄い技術でもあるの?
………
「凄い…」
私はこの光景にただただ圧倒されていた。
石造りの大きな建物の前には衛兵が立ち、門を守っている。
今からここの中に入るのかと思うとドキドキしてきた。
それは、ワクワクする心からなのか、いざ目の前に駐屯所があり、捕まっていることを自覚したからなのか…
そんなことを考えているうちにロープを引っ張られた。
「おい。行くぞ。」
ヤバい少し緊張してきたかも…
ていうか今まで何でこんなに緊張しなかったんだろう?
これ結構大変な状態なんじゃない?
気が気でない中、私は建物の奥に連れて行かれた。
どうしよう…
このまま殺されたりしないよね…
私から少し離れたところで衛兵達が真剣な顔で話してるし…
しばらく話したあと一人の衛兵が一枚のカードらしきものを持ってきた。
「手を出せ。」
え?何するの?
と思いつつロープで縛られた両手を差し出すと…
「痛っ!」
手をいきなり切られた!
「ここに血を押し付けろ。」
「はいっ!」
わけがわからなくて、やけくそで傷口をカードに擦り付けた。
すると…
「わっ!」
いきなりカードが淡く光りだした!
何これ!怖い…
しばらく経ち、カードの光が止まり一人安心していたら、周りにいた衛兵達が私の血を押し付けたカードを見て慌てたように話し始めた。
私、何かしちゃったかな?
血を付けろって言われたからカードに血を付けただけだよ?
「おい!お前。」
「はいっ!」
「王がお呼びだ!ついてこい!」
これは本当にやってしまったかもしれない…
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