あなざーわーるど
食連星
第1話
連絡が入る。
取り急ぎ。
「ウグ、急ぎ?」
・・・
あ…?
「あぁっ!」
振り向きざま音を出す。
後にしてくれ。
全部。
ごつごつとした地面は足の裏に凸凹当たって
だからどうという訳ではないけれど。
「わざわざお出ましで?」
半笑いの商人を見下ろす。
「息上がりしそうな勢いだな。」
うるせぇな一大事だ。
実際見ないと脳内情報だけでは決め手に欠ける。
「あぁ。
例の物は?」
「おく。」
「億?」
まぁ言い値で買うしかない。
「物を見ない事には。」
「だからおくだよ。」
「見物料も込みで売るようになったのか。
阿漕な商売だな。」
「あぁ…
店の奥だ。」
店の…奥ね。
裾が擦り切れたマントが目に入る。
「儲けてるだろうに。」
「店の奥だっ。」
振り返ってへの字になった口元を見る。
「もう億の話は終わったよ。」
笑う。
「多少なりとも衝撃的でね。」
「何がだ」
・・・
言いながら目に入るは、
口元も目元も縫い付けられた四肢完全体だった。
「言葉が無いな。」
「だろう。縫い付けた。」
「見てる。こっちもだ。」
「縫い付けてやるか。」
「違う」
これはこれは。
珍しい。
「穴が開くぞ。」
「しっかり縫い付けたんだろ。」
「それ位見てるな。
激しく声を上げるから黙らせた。
すると、目で訴えてくる。水を出すんだ。
うっとおしいから閉ざした。」
「いいな。」
あぁ、いいな。
これは、いい。
「未分化か。」
「分化を待つまで持つか分からんぞ。」
「確かにね。
鼻から飲み食いさせられない。
サーチかけても?」
「どうぞ。
呼吸させてるから生々しいよ。」
「身震いするね。」
爪と指肉の間から血液を採取する。
くぐもった声が届く。
身体が痛みという反応を示す。
神経の伝達も十分だ。
いずれ自分の身体となる。
傷は少ない方がいい。
例え永久的でないにしろ。
様々な状況に充てて分析させる。
「腕と脚の状況は?」
「いいよ。
旨く機能してる。
完全体は、これだけ?」
「間に沢山入ってるから情報は錯綜してる。」
「いる?いない?」
「そいつに訊くか?」
商人が笑う。
「また塞ぐのが面倒だ。
だから、いい。」
「まだ未分化だ。
顔の傷も目立たなくなると思うよ。」
「あぁ」
顔は博士の愛した造形だから、
首下を考えてたんだが…
その博士もいないからな。
あぁ…
「定着率が20%だ。」
「宜しくないな。」
「脚が腐るかもしれない。」
「全てとっかえじゃないのか。」
「これは」
「あーもういいよ。」
ふふっ音を出す。
いい話なのに。
「脚は」
「分かったよ。一言一句違わずに繰り返せる。
私達は、それが出来る。」
「そこは重要ではないよ。
私が納得して話せる事が重要。」
「作業しても?」
「客だぞ。」
「先の瞬間に客ではなくなっただろ。
君なら全部買えるだろうと踏んでたのさ。
分解して出す事にしよう。」
「せっ」
?
何を言い出すんだって顔をする。商人が。
いっちょ前に。
まぁ、せっかくの完全体をバラスのかって買わない奴が言い出すのも。
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