第31話☆

 わたしたちはその場にとどまり、少しだけ会話をしました。


 わたしよりも幼く見えたリアナちゃんがひとつ上の学年だったことを知り、慌てて「リアナさん」と呼びなおすと、彼女はくすりと微笑み、「リアナちゃん」でいいよと言ってくれました。


 彼女もわたしと同じ特待生だそうです。でも、交換条件で入学してきたわたしと違って、彼女はちゃんと試験を受けて入学してきた本物の特待生です。

 すでにいくつかの魔術を無詠唱で発動することができるそうです。これはすごいことで無詠唱魔術ができる人は、上級生でも僅かしかいません。若くして無詠唱魔術を体得するには才能に加えて相当の努力が必要だとモニカ先生に教わりました。


 特待制度はそんな才能があっても学費が支払えない人の救済措置なので、特待生の家庭は決して裕福ではないと聞いています。

 彼女の家も地主から農地を借りている小さな農家であり、今は親元を離れて学校の寮で暮らしています。


 それから、リアナちゃんを取り囲んでいた生徒たちは彼女と同じ学年の同じクラスの女子で、イジメは彼女が入学してきた当初から一年以上も続いていると話してくれました。


 辛い告白なのに、頑張って話してくれたと思います。喉が苦くなりわたしは思わず泣いてしまいそうになりました。


 なぜ彼女のように努力してきた人をイジメるのか理解できません。

 前の世界でも同じような話を耳にする度に、わたしを助けてくれた葵ちゃんの言葉を思い出すのです。


 ――悲しいことだけど、人という生き物は集団になるとワザと異物を創り出して排除しようとするのよ――。


 だからリアナちゃんは標的にされたのです。許せません。



 次の日から、わたしとリアナちゃんは昼食を一緒に過ごすようになりました。

 わたしと仲良くしてくれるクラスメイトたちからは少し疎遠になってしまいますが、みんなわたしのことを気に掛けてくれています。男子たちからも声を掛けられるようになりました。


 彼らからは何もしてあげられないという歯がゆさが伝わってきます。

 わたしは彼らが罪悪感を抱かないように、以前よりも自分から積極的にクラスメイトと関わるようにしています。


 それでも快く思わない一部の生徒はいるようです。彼らからすれ違い際に「いい子ぶっちゃってさ」とか「自己満足ウザー」など小声で陰口を言われるけど気にしません。

 ロランさんならきっと「そんなもん鼻で笑い飛ばしてやれ」と言うはずです。


 そう、この学校にはロランさんがいるのです。それだけでわたしは何を言われても、何をされても耐えられる強い気持ちを保つことができます。

 

 

 

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