第36話
高田は話題を変え、北星市ミサイル事故の犯人について触れ始める。
北星市ミサイル事故は、16年前に起こった悲惨な出来事だ。自衛艦から誤射されたミサイルが、北星市の百貨店を直撃して数百人の死傷者が出た。表向きは事故とされているが、真相は犯人によるハッキングだと思われる。
ただし、誰が行ったのかについてはまだ何もわかっていない。高田はかねてから中華連邦の工作員が仕掛けたものだと疑っている。
犯人は、全ての自衛隊のミサイルを掌握しているとして、内閣を脅した。
だが、犯人が誰かも、ハッキングによってどのような脆弱性が攻撃されたのかも分かっていない。
野口は、犯人とコンタクトを取っているのは内閣総理大臣藤田健太郎や、官房長官・渡辺光宏であると告げる。野口自身も新進党の地方議員のため、ある程度の情報は入ってくる。
藤田健太郎、渡辺光宏、斉藤一郎の3人は全員同じ新進党に所属しているが、藤田健太郎と渡辺光宏の二人は藤田派に属し、一方で斉藤一郎は桜井派に所属している。新進党内では、藤田派と桜井派がそれぞれの立場を主張し、党内で影響力を持っている。これにより、党内の力関係が複雑に絡み合っており、政治的な判断や行動に影響を及ぼすことがある。
藤田派は、経済成長を重視する政策を掲げている。彼らは、国民の生活水準を向上させるために、経済政策や社会福祉政策に力を入れており、教育や医療、環境問題などにも積極的に取り組んでいる。藤田派には、新進党の議員のうち、約120人が所属している。
一方、桜井派は、伝統的な価値観や文化を重視し、国家主義的な政策を支持している。彼らは、自衛隊の強化や国防政策の強化を訴え、外交政策では力強い姿勢を示すことを重要視している。また、地方創生や少子高齢化問題の解決にも力を入れている。桜井派には、新進党の議員のうち、約80人が所属している。
新進党内では、これら2つの派閥が互いに競い合い、政策立案や党の方針に影響を与えている。藤田派と桜井派の対立は、党内での様々な問題や意見の相違を引き起こしており、政治家たちの間でも複雑な力関係が生まれている。
野口は懸念げに話す。「桜井派は軍拡に進もうとしているんだ。彼らは自衛隊の強化や国防政策の強化を訴えており、そのために予算を増やそうとしている。藤田総理は経済を重視しているが、桜井派からの圧力は大きいようだ。」
貴仁は考え込む。「藤田総理は二つの派閥の間でバランスを取ろうとしている。」
野口はうなずく。「そうだ。藤田総理は両派閥からの支持を受けているため、どちらにも配慮しなければならない立場にある。だから、桜井派の要求にも一定の譲歩をせざるを得ない。」
臺灣民主共和国の情勢にも慎重に対処しなければならないことを高田は強調する。桜井派は強硬派であり、斉藤一郎大臣は何度も挑発的な軍事演習を行っていることから、緊張状態が高まっている。
戦争に向かおうとしているかのように見えるこの状況は、貴仁たちにとっても大きな懸念事項である。彼らは、技術力を活用して平和な解決策を模索しながら、複雑な政治的なバランスにも気を配らなければならないのだ。
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