第22話
「釈放だよ」という声が聞こえた。高橋刑事だった。
証拠不十分で不起訴になるようだ。
これで、もう不毛な取り調べは受けなくて良い。
貴仁はほっとするが、まだ油断はできない。
警察署を出るとき、見知った顔があった。野口刑事だ。
野口刑事: 「お疲れ様です。ちょっと、話があるんですが、いいですか?」
貴仁: 「え、話って?」
野口刑事は隣にいた高橋刑事を見て、再び貴仁に話しかけた。
野口刑事: 「実は、あなたの父親に関する情報が入ってきまして、それをお伝えしたいんです。」
貴仁: 「父親のことですか…。どういうことですか?」
高橋刑事: 「あなたに直接話さないといけないことがあるんです。少し時間があるなら、一緒に来てもらえますか?」
貴仁は、父親のことを聞けるという言葉に心を動かされ、同行することを決める。
貴仁: 「分かりました。どこへ行くんですか?」
野口刑事: 「近くの古い店に行きます。そこで落ち着いて話ができると思います。」
貴仁は二人の刑事と共に、車に乗り込んだ。
20分ほど車で走り、高橋が運転している。途中で何が起こるのかという不安が頭をよぎるが、父親のことを知るため、貴仁は決意を固める。
車はやがて古い店に到着した。
木造の建物で、その外観は長い年月を経た風合いが感じられた。
屋根には苔が生え、窓ガラスは曇り気味で、中がうっすらと見える程度だった。扉の上には、小さな看板が掛けられており、 かろうじて店の名前が読み取れる。
周囲には似たような建物が立ち並んでいて、まるで時代を越えたかのような錯覚に陥る。
店の中に入ると、床は畳が敷かれ、天井は低く、照明は暖かみのある光で照らされていた。壁には古ぼけた写真や色褪せた掛け軸が飾られており、歴史と文化の息吹を感じさせる。
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