第6話
ありさが純礼と暮らすようになって3週間がたった。度々電子研究部の部室にも来るようになった。
部室で過ごす時間が増えるにつれ、10歳のありさはドローンやPT-RFIDの技術にも興味を持つようになったようだ。
貴仁や純礼から技術の基礎を熱心に聞いてくる。
子どもらしい好奇心だ。
純礼は、ありさが勉強するのに適した環境を部室に整えてあげた。彼女はありさのために快適な椅子を用意し、デスクの上には文房具や参考書が整然と並べられている。
純礼は、ありさの勉強の進度や理解度に合わせて、適切な指導を行うことを心がけていた。
「今日は算数をやろうか。」純礼は、教科書を開きながらそう言った。ありさは、算数があまり得意ではなさそうだ。スラム街では満足に教えてもらってなかったのだろう。
しかし、純礼の優れた指導力によって少しずつ理解できるようになっていた。
純礼は、ありさに問題を解かせる前に、まず基本的な概念や公式を丁寧に説明し、それを図や例題を使って具体的に説明していた。彼女は、理解できるまで何度も繰り返し説明し、ありさがつまずいたところを丁寧にサポートしていた。
「これはどうしてこうなるの?」ありさが疑問を投げかけると、純礼は笑顔で「じゃあ、一緒に考えてみよう」と答える。
二人は互いにアイデアを出し合い、問題を解決するために協力して取り組んでいる。
「実は、勉強を教えてほしいんです。純礼さんにも教えてもらってるんですけど、貴仁さんの考え方や解き方も知りたいなって思って。」
「もちろん、僕でよければ喜んで教えるよ。どんな科目が苦手?」
「特に英語と理科が難しいです」
そう言われて、貴仁も勉強を教えるようになった。
英語と理科は貴仁が、数学と国語は純礼といった具合だ。
自頭がいいのだろう。
ありさは教えられたことをどんどん吸収していく。
「なぜこうなってしまったんだろう?」
ありさを見ると、貴仁はいつも考えてしまう。
この国には義務教育があって、最低限の教育は誰でも受ける事ができる。
そのはずだった。
少なくとも自分の周りの世界では。
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