第5話

病院では、潤の重症が判明し、すぐに手術が行われることになった。

貴仁と純礼は、病院の待合室で緊張しながら手術の結果を待っていた。


「貴仁、潤さん、きっと大丈夫だって。病院の先生たちはプロだから。」

「ありがとう、純礼。そうだね、信じよう。」


数時間後、医師が待合室に現れ、手術の結果を伝える。

幸い、手術は成功し、潤の命に別状はない。

医師は潤の経過と医療費の説明を行う、貴仁は約束通り、治療費を負担することになった。


潤が無事であることには安堵するが、もう1つ問題が残っている。ありさだ。

潤が病院での治療とリハビリを経て回復するまでの間、ありさはどこで過ごすべきか。

まさか、スラム街に戻すわけにもいかない。


「ありさちゃんのことも考えないと。」

「貴仁、ありさちゃんのこと、私が引き取るわ。潤さんが回復するまでの間、彼女の面倒を見ることになるでしょうし、一緒に暮らすことで、彼女の生活を少しでも安定させたいと思うの。」

「本当に?それはありがたいよ。でも、純礼は大学や研究も忙しいだろうに。大丈夫?」

「うん、大丈夫だって。ルールがあるけれど、そこはなんとかする。」

やると決めている目だ。任せてもいいだろう。


純礼はありさを自宅に引き取ることを決める。

貴仁も純礼の決断を支持し、ありさを助けるために協力することを約束する。


「ありさちゃん、潤さんが回復するまでの間、私と一緒に暮らさない?潤さんが元気になるまで、私が面倒を見るわ。」

ありさは驚いて、目を丸くする。

「えっ、本当に?でも、純礼さんは大学や研究で忙しいじゃないですか。私、迷惑じゃないですか?」

「うん、お父さんに話してからになるけど」


潤は手術後、意識を回復していた。

医師からは短い間ならば会話できると言われている。


純礼と貴仁は病室で潤にありさのことを話す。

「潤さん、手術が無事に終わって本当に良かったわ。少し痛みがあるかもしれないけど、無事に回復するって医師が言ってたわ。」

潤はうつろな目で純礼と貴仁を見つめ、力なく微笑んでみせる。

「ありがと…。ありさは…どう?」

「実は、その話があるんだ。潤がここで回復してる間、純礼がありさを引き取って面倒を見ようと思う。」

申し訳ないという気持ちはあるのだろう。しかし、それを表情に出す余裕もないようだ。

潤の目に涙が溢れる。

潤:「ありがとう…本当に…ありがとう…。」

何かあった時は誰かが助けてくれる。こんな当たり前のことも、この家族には当たり前ではないのだろう。


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