アイドルの妹になりました。
涼
第1話 スーパーアイドルが我が兄に!?
「こちら、
「…!?」
私は、固まった。そこに居たのは、
「
心葉くんは、にっこり、テレビのまんま、微笑んだ。
「…は…はぁ…」
「喑縁、あなた、ちゃんと挨拶しなさい!」
「良いですよ。いきなり僕が兄って言われても、困るのは分かりますから」
「ごめんなさいね。心葉くん。この子、心葉くんが13歳でデビューしてから、ずっとファンだったのよ。だから、いきなりだから、放心状態になっても仕方ないわよね…。でも、喑縁、しっかり、挨拶はしなさい」
「は、はい。
棒読みだ。下手な新人俳優より、もっとひどい。ど素人。素人以下。てか、人間以下?な、私の挨拶を、心葉くんは、ニコッと笑って、あんなに憧れた、あり得ないと思っていた、頭ポンポンを、私にした。
「改めて、よろしく。喑縁」
(よ!呼び捨て!!)
私は、失神…寸前だった―――…。
「お義母さん、ご飯、美味しいです。お料理上手なんですね」
「まぁ。心葉くん、いいのよ?そんなお世辞言わなくても。おばさんまで照れちゃうわ」
(この人…本当に照れてる…)
娘ながら、恥ずかしくなった。失神寸前になって置いてあれだけど。
心葉くん(お兄ちゃんと呼ばれるのは、何となく嫌だからと、言われたため)の父親と、私の母親は、いわゆる婚活パーティーで出逢ったらしい。心葉くんの母親は、早くに亡くなっていて、男手一つで、お義父さんがずーっと育てて来たと言う。その苦労を知っていた心葉くんが、少しでもお父さんを楽させられないかと、アイドルになることを決めたのだと言う。
⦅ちょ!嘘でしょ!?お母さん!!心葉くんと一緒の部屋なんかに居たら、呼吸出来ない!!⦆
⦅仕方ないでしょ?部屋が無いんだから⦆
⦅でも!!⦆
⦅大丈夫よ。心葉くんがあんたなんて相手にするはずないんだから⦆
⦅……⦆
滅茶苦茶頭に来たけど、まぁ、それもそうだ。
「ごめんね、心葉くん。このマンション、部屋数なくて。
「はい。解りました。でも…僕は構いませんが…喑縁は嫌なんじゃ…」
(また呼び捨て!!)←失神寸前。
「い、いいです!!大丈夫です!!部屋は…毎日、掃除、してたんで、き、汚くないと…お、思います…」
「もう、喑縁、そんな緊張しないでよ。俺たち、兄妹なんだから」
「じゃ、お休み。心葉くん。喑縁」
「「おやすみなさい」」
「喑縁は…、どんな子なの?」
「え?」
「俺はねぇ…すんごいヤな奴だよ?勉強出来ないし、お世辞しか言えないし、大人の顔色しか見ないし、仕事以外、なんの特技もないし…」
「でも、お義父さんのためだったんですよね?芸能人になったの。すごく、素敵なことだと、私は、思います。それに、私だって、勉強できないし、でも、お世辞は言えないし、大人の顔色なんて見るのも嫌だし、仕事なんかしないで、一生学生のままでいたいです」
「あははははははは!!!すんごいね!喑縁!そこまで言う15歳。すんごい!」
「…そ…そうですか?」
「ねぇ、良い加減、敬語、辞めない?俺たち、兄妹!!」
(なんか、他人でいた時より、遠くなった気がするのは…なんでだろう?)
別に、さっきの言動で心葉に幻滅した訳でも、特別な感情を抱いたわけでもないけれど、なんだか、寂しい、喑縁。
「喑縁、こっち来ない?」
「は!!??」
心葉が、床に敷かれた、布団を、ポンポンと叩いて、はらりと布団をめくった。
「い!いかない!いかないです!!」
「あはは。冗談だよ。ごめんね。なんか、自分より年下の子が傍にいると、こんなにホッとするんだね。これから、よろしくね。喑縁」
「…冗談には…いいものと、悪いものが…ありまして…、今のは…絶対、後者だと…」
「あはは。ごめん、ごめん。許して。お休み」
「おやすみなさい…(心葉くん)」
(眠れるか―――――――――――!!!!!)
夜中3時。喑縁の目と頭は冴えたまま。『お休み』してから、一睡も出来ていない。だって、それはそうだ。ずーっとファンだったアイドルが、いきなりお兄ちゃん!?そんなの、誰が想像する!!妄想はするかも知れないけど!!と、11時にベッドに入ってから、頭を回るのは、そんなことばかりだった。心臓が、バクバクして眠れない。
(もしかして…本当に…もしかしてだよ?本当に…心葉くんをすきになっちゃったら…、どうしたら良いんだろう…?告白なんてしたら、家族でいるのも辛くなるし、上手くなんて、行くはずもないし…)
これも、今夜、100回くらい考えた。
すると―――…。
もぞ…っと、布団がめくられた。
「え…?」
「やっぱり、一緒に寝よ」
「は!?」
硬直。
心葉が、喑縁のベッドに入って来たのだ。
(噓でしょ!?)
もう、何が何だか分からない喑縁。
「喑縁、いい匂い。ちょっと、眠れないくて…一緒に…寝て」
そう言って、心葉は、喑縁を抱き枕みたいにして、包み込むと、ほんの1分足らずで寝息を立て始めた。
(ちょちょちょちょっとまって!!どういうこと!?私、どうしたら良いの!?)
完全に、パニック状態の喑縁。
その喑縁をよそに、熟睡中の心葉。
「…傍に…いて…」
寝言…だろうか?心葉が、ぽろっと零した言葉で、急に、喑縁の頭が静かになる。そして、喑縁の耳に、暖かい水が滴って来た。
(な…涙?……心葉くん…。いっか。このままでも…。ねよ…)
すると、何故か、5分後には、喑縁も静かに眠りに落ちていた―――…。
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