答えを知らぬ者たちに B
エリー.ファー
答えを知らぬ者たちに B
「この街で子どもの惨殺死体が発見されました。そのことについて、どのように思いますか」
「この街らしい事件だと思うけどね。何せ、昔もあった事件だからさ。まぁ、表にはならなかったけども」
「子どもたちには、ある学習塾を利用していた、という共通点があります。該当の学習塾について、何か知っていることはありますか」
「さあね。ただ、共通点が学習塾っていうのがかなりの見当違いだと思うよ。もっと複雑で、もっと分析した結果を指針にするべきだね。かなり間違った道しるべだよ」
「この街では、そもそも強姦などの事件が多いという傾向があります。その点について、どのような感想を持っていますか」
「興味ないね。好きにやってればいいと思うよ。犯罪者側も、捕まえようとする側もね」
「街に関する情報が、公表されていないという批判があります。その点について、どのように考えていますか」
「この街だけの問題ではないね。他の街でも言われていることだよ。そして、もっと言っていいのであれば、この国がその性質を持っているね、批判としては正しいが、この街に限ったものではないね」
「この街には電車の駅もなく、高速道路もなく、非常に不便であると言われています。しかし、他の町へ引っ越しをする方は非常に少なく、むしろ移住する方が多くいます。一体、どのような理由があるのだと考えますか」
「街が呪われている。これが真実なんじゃないかな」
「この街は一年中雨が降っており、晴れや曇りが極端に少ないと言えます。そのような天気に関して、生活で困っている点はありますか」
「困っている点はないかな。ところで、この街の名前には、雨という漢字が入っているだろう。大抵の人は、この特徴的な天気が由来になっていると思っているけど、いい勘違いさ。本当の由来は、雨が降らない土地だったからだよ。そう考えると、過去と現在で合わせたら丁度いいくらいになっているのかもしれないね」
「では、生活をする上で助かっている点について教えて下さい。」
「この天気を巧みに利用して、仕事をしている人たちは大勢いるけど、僕が助かっているわけではないかな」
「この街には江戸時代に使われていたとされる、処刑場があります。観光地として活かそうとの考えが出ておりますが、不謹慎との理由で反対する意見も出ています。あなたはこの案に賛成ですか、反対ですか」
「賛成だね。観光地は多いよりも少ない方がいいよ。人によっては不謹慎とか、オカルト的で好きじゃないとか、色々あるんだろうけども、まぁ、意見なんて人それぞれだし、無理に合わせる必要もないね」
「街が盛り上がることに賛成ですか、反対ですか」
「賛成だね。この街の暗部にも光が差すきっかけになればいいと思ってるよ」
「この街で一番大きい会社である、比沢紅子株式会社について、何か意見はありますか」
「潰れるべきだね。この街にとって、害悪でしかない」
「この街が好きですか、嫌いですか」
「どちらでもないかな」
「その理由とはなんですか」
「正確に言えば、僕はこの街の住人じゃないからね」
「街を愛する人が、今後は増えていくと思いますか」
「増えるさ」
「その理由とはなんですか」
「この街は誰の目にも興味深いよ」
「最後に何か言いたいことがあれば」
「日本という国は、死を持って償うべきだ。この街から始まる革命は、そんな歪みを抱えた誘いそのものなのさ」
答えを知らぬ者たちに B エリー.ファー @eri-far-
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