第2話② 神の気まぐれ、もしくはツンデレ
そのまま部屋に帰りたかったのだが蓮斗は僕にもついてきてくれと言って無理に勇気のところに同行させた。
「……というわけなんです」
蓮斗が僕に話したことをそのまま勇気に伝える。
「よく相談してくれた。流石に給料を増やすことはできないがクエストが負担にならないように仕事量を減らして……」
「でもそれだと給料も減ってしまいますよね。お願いしたいのはその逆です。もっとクエストに参加させてください」
「それはできない。クエストをこなす量が増えるほど蓮斗くんのパフォーマンスは落ちる。そんな状態の君を危険なクエストに参加させることはできない」
「でも」
「これは君のためだけじゃない、他のメンバーの安全も考えてのことだ。クエストの量を減らしても給料が減らないようにするからどうか休んでくれ」
「しかしそれだと他のメンバーからの不満が増えますよね。それは俺だけ優遇されているみたいで心苦しいっす」
(やっぱり大きな人が言い争いしていると迫力あってワクワクしますね)
『口論をそういう楽しみ方するやついるんだな』
「うーん、なら俺がどうにか説得するよ」
「いや、俺自身が許せないんす」
(二人とも譲りませんね〜。このままだと長引きそうです)
『本当にこいつらごちゃごちゃと面倒くさいな』
(二人ともそれぞれの考えがあるんですよ)
こいつらの話し合いなどどうでもいいから早く結論を出してくれと僕は投げやりに一つ提案をした。
「もうその妹を回復魔法を使って治せばいいじゃん」
口に出してみると意外といい案なのではないかと思ったがすぐに勇気に否定された。
「異世界じゃないと魔法は使えないよ。知らなかったの?」
『知らなかった。向こうの世界で魔法を使えるのは僕だけなのか?』
(あれ、気づいてなかったんですか? 私言いませんでしたっけ)
『聞いてない!』
「え、あー、ずっとこっちにいてあんまり帰ってないから」
「たまには帰ったほうがいいよ。感覚がおかしくなっちゃうからね」
苦しい誤魔化しだが勇気は納得したようだ。
「う、うん、そうする。それじゃあこっちの世界に連れてきて回復魔法を使ったら?」
「あいつにあんまり負担をかけたくないっす」
「それに回復魔法は外傷を治すには適しているが内科的な治療は全く研究が進んでいないんだ。できるのは解毒くらいで」
「そ、そうなんだ」
『相変わらず人間の魔法は程度が低いな』
(人間の研究をしていたくせに知らなかった人に言われたくないと思いますよ)
「とりあえずこの話の続きは明日にしよう。また明日の朝ここに集まってくれるかい?」
「わかりました」
蓮斗はそう言って頷いた。
「それじゃあまた明日、凪くんも」
「ん? 僕も?」
「うん。明日までに何とか解決したいね」
『くそっ、こんなことになるなら相談など無視しておけばよかった。明日一日この不毛な言い合いを聞かなければいけないのか。それならせめて』
「……そうだ。せっかくだから近場にレベル上げに行こう。リーダーと僕が見ているなら彼も無理しないだろうし、気分転換にもなるし」
『実験にもなるしな』
(ああ、それが目的ですか)
『相談の報酬だ』
(相談しただけで人体実験されるなんて不当ですよ)
僕は部屋に戻って今日の研究記録をまとめていた。
(明日どうなるんでしょうかね)
『勇気がどうにか説得するだろ。それでも拒んできたらクビかもな』
(クビですか……)
『そもそもあいつはクビ候補だ。交渉できる立場にないんだよ』
(いや、主様こないだクビ最有力候補だったときにめちゃくちゃごねてたじゃないですか)
『うるさいな、メイはいつも……。そういえばお前この前研究進んでないなとか言ってたな』
(言いましたっけそんなこと)
『言った。確かに言っていた。お前みたいなアホの役立たずの研究で人間を被験体にするなんて最低すぎる。どうせこのまま続けていても意味ないんだから今すぐやめろと言っていた』
(それは言いました)
『言ってない。ちゃんと否定しろ』
(言ってはないけど思ってました)
『お前制裁を全く恐れねえな。まあいい。見せてやるよ、研究の成果を』
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