ラーメンを食べて死ぬ

エリー.ファー

ラーメンを食べて死ぬ

 ラーメンを食べたい。

 死ぬ前に食べたい。

 美味しいラーメンが食べたい。

 死んだらラーメンを楽しめなくなるので、生きている間に美味しいラーメンを食べたい。

 とにかく食べたい。

 大量にラーメンを食べたい。

 ご当地ラーメンを食べたい。

 すべて食べたい。

 ラーメンを食べるために生きているのだから、ラーメンを食べられなくなったら死んでもいい。

 ラーメンが最高。

 ラーメンが完璧。

 ラーメンこそ至高。

 世界で一番美味しいラーメンを食べたら死んでも良いと思っている。

 けれど。

 世界で一番美味しいラーメンは常に更新されていくものであるため、死ぬわけにはいかない。

 ラーメンには多くの種類がある。

 塩ラーメン。

 醤油ラーメン。

 味噌ラーメン。

 辛味噌ラーメン。

 豚骨ラーメン。

 塩豚骨ラーメン。

 魚介豚骨ラーメン。

 広東メン。

 チャーシューメン。

 タンタンメン。

 タンメン。

 パーコーメン。

 天津メン。

 五目メン。

 ワンタンメン。

 サンマーメン。

 サンラータンメン。

 つけ麺。

 まぜそば。

 油そば。

 ざるラーメン。

 レモンラーメン。

 鯛ラーメン。

 エビラーメン。

 ホタテラーメン。

 パイナップルラーメン。

 鯖ラーメン。

 カレーラーメン。

 チャンポンメン。

 マーボードーフラーメン。

 スタミナラーメン。

 天ぷらラーメン。

 等々。

 エトセトラエトセトラ。

 色々。

 ラーメンは素晴らしい。

 この世のすべてのラーメンを食べなければ死んでも死にきれない。

 だから。

 ラーメンが生きる希望、そのものになっている。

 死ぬ前に食べるラーメンを決めようとしたことがある。

 しかし、決められなかった。

 何故なら、ラーメンに上や下は存在しないからだ。

 もっと言うのであれば。

 人を幸せにできるコンテンツとは、上位、下位などの下劣な評価によって区切られてはならないのだ。

 ラーメンを食べ。

 造り手に感謝をして。

 完食している者であれば。

 分かり切っている常識だ。

 ある意味、私はこの常識をより多くの人に広めるためだけに生きていると言ってもいいかもしれない。ラーメンから与えられた幸福を、社会に還元するための肉体であり、命であり、精神なのだ。

 これは大げさではない。

 私が抱えている真理なのである。

 ラーメンが最高。

 いや、ラーメンに携わる人々が最高。

 いやいや。

 ラーメンが存在するこの世界が最高。

 私はラーメンをこの世に生み出した、存在。

 神に感謝している。

 たまに、私は自分でラーメンを作る。

 カップラーメンがほとんどだ。

 もちろん、美味しい。

 少しばかりチープな味だが、十分満足できるし、本来美味しさとはベクトルの向きの問題であるので何の問題もない。

 むしろ、お店に行ってラーメンを食べるのではなく、そのお店が出しているカップラーメンを家で食べたいと思うくらいに心が高ぶる時もあるくらいだ。

 私は。

 私の中にある常識が変化していく音を聞いている。

 常に、私はラーメンと共に社会を渡り歩き、究極とは何なのか、最高とは何なのか、頂上とは何なのかを考えている。

 どんぶりの中に見えるのは、私の人生だ。

 そして。

 一杯の幸福なのだ。

 ラーメンに救われた人は、この世の中にどれくらいいるのだろう。

 百人くらい集めて話してみたい気分になる。


 いつか、また。

 それでは、また。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラーメンを食べて死ぬ エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ