第11話 ダンジョン内での事情



(今日寝る時は暖かくなりそうだ)


睡眠環境が良くなりそうなことに喜んだ。


魔力が回復した事でさらにダンジョン内を探索する。


それからも何度かアッシュウルフとダークスネークと遭遇しつつ、魔力が枯渇したらセーフティーゾーンに戻り、という事を繰り返しながらしばらく探索すると3階へ続く道を発見した。


(道は発見できた)


一度休憩しようとセーフティーゾーンへと踵を返した。


(……トイレしたい)


昨日までは生きることに精いっぱいで水分を摂取することも後回しにしていたからか尿意を感じなかった。


今日はセーフティーゾーンという安全地帯を得て、拠点というには心もとないがモンスターから襲われない場所を得ることが出来た。


そこで食事も睡眠もとることが出来た。


結果今尿意をもよおした。


流石にモンスターがどこから襲ってくるか分からない場所ではしたくない。


漏らすことは避けたいと駆け足でセーフティーゾーンへと戻る。


途中で数体のダークスネークと遭遇したが迎撃を避け逃げるようにセーフティーゾーンへと滑り込む。

その結果、境目でダークスネークが置いてきぼりされた。


(今は君たちに構ってられないの!! 後で始末するから待ってて!!)


急いで拠点にしていた岩陰に戻る。


(うぅ……こんな場所でトイレなんて嫌だ……)


でも漏らすのはもっと嫌だ。


せめて壁際で済まそうと諦めて用を足した。


匂いも気になったので大盤振る舞いで範囲浄化サークルクリーンを施した。

用を足した場所も、朝うがいした場所も綺麗になった。

その際いつもいる岩も対象になり薄汚れていた岩も綺麗になった。


(……恥ずかしい。 1日で消えるって言ったってそれまでずっと残るのなんて嫌、羞恥で死ねるわ)


はーっと長いため息を吐いた。


(今ので魔力の残りが3分の1になってしまった)


魔力の回復を待ちがてら食事休憩を取るかと先ほど取って来たアッシュウルフを岩陰に敷き、その上にブルーシートを乗せその上に腰を下ろした。


(あ……全然違う。 冷えが全くない)


固い地面とは違いアッシュウルフの毛皮の柔らかさを感じる。


(持ってきて正解だったね)


アイテムボックスから菓子パンを取り出し袋を開け齧った。


(そう言えばさっき解毒したダークスネークの肉試してみようかな)


アイテムボックスから折り畳み式の一人用のコンロを取り出す。


(これ……蓋の部分鍋として使える)


適当に持ってきたものだったがどうやらガス式の物だったようだ。

蓋を取りひっくり返すと鍋としても使えるようになっていた。


(こんなふうになっているんだ)


そう思いながら鍋に油を入れ調理ばさみで毒抜きしたダークスネークの肉を切り塩と胡椒を適当に振りかけ火を着ける。

流石に全部は入らないので持ってきたジップロックに半分入れてアイテムボックスの中に放り込んだ。


(近くにあったこれなにかと思ったけどガスのカートリッジだったんだ。 いくつか持ってきて良かった)


自分の判断を褒める。

ガス式というのもありがたかった。


最初火魔法や水魔法が使えるから台だけ持ってくればいいと考えていた。

実際には魔力が足らない。

ガス式じゃなかったらさらに魔力不足に陥っていたなと火を見ながらぼんやり考えた。


なべ底が温まったらしくジュ……と肉の焼ける音が聞こえてくる。


(モンスターの癖に良い香りしてやがる)


裏面に火が通ってきたが表はまだ生のままだ。

もって来た竹串でちょいちょいと器用にひっくり返す。

思ったよりも火力が強いらしくちょっと焦げていた。


(これ……中に火が通るまでに焦げる? どうやって火力調整するの? ……あ、火が消えた)


使い慣れないガスコンロに四苦八苦しながらなんとか焼き終える。


(香りは良い。 どれ……味はどうだ?)


生肉を刺した竹串から別の竹串に変えてダークスネークの肉を頬張る。


(……あ、美味しい美味しい)


鶏の胸肉ようにさっぱりしているけれどしっかりと歯ごたえがあり意外とジューシーだ。

外側の焦げが良い感じに仕事している。


(鳥のもも肉と胸肉の中間みたいな味だな。 毒も大丈夫そうだし……ダークスネークいいね)


毒瓶はモンスターを弱らせる道具になる。 肉は食料として美味しく頂ける。



鍋を手に取り立ち上がると、セーフティーゾーン間際でまだシャーシャー言っているダークスネークを見やる。

竹串で残りのお肉を美味しく頂きながらそいつらを逃がさないように監視した。


(アッシュウルフと違って群れで行動しないから討伐数稼げないんだよな。 こんなに美味しいのに)


食べ終わると体に違和感が無いか手を握ったり開いたり、飛び跳ねたりして確認する。

どこにも異常が無いのを確認すると素早く移動しセーフティーゾーン間際で威嚇を続けるダークスネークを狩った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る