獣唄ハルデニオ

エリー.ファー

獣唄ハルデニオ

 もしも、の話をしよう。

 このまま地球が壊れずに形を残していたとして。

 何もかも、勘違いで彩られた世界を作り出すことがすべてだ。赤いライトの中に、自分を見出すばかりである。笑顔からはみ出た悪意が、私たちを作ってくれる。警察官の影や声が聞こえたら、この夜も終わりになる。トーナメントには青い思考が必要だ。重要なことは、いいかい、重要なことはね、体を荒く動かすことではなく、声を響かせることなんだ。地下のクラブに自分の影を見つけるしか、生きる道なんてない。葉っぱ、野菜、なんだっていいけど、柴犬の叫び声が響いている渋谷駅に集まってきたゾンビたちを、一体残らず殺して、ここで勝利する。

 また、嘘だ。嘘をついてばかりだから、お前は駄目なんだ。リアルじゃないってことさ。分かるだろ。どちらが勝者か、なんて、そんな小さな話じゃない。上か下かではない。どちらが、上がるのがってことだ。ここじゃ、ランクなんてものに意味なんかない。分かっているからこそ、持っている武器をすべて使おうとしているんだろう。夕焼けが見えるビルの屋上で、自分の姿を多くの人の目に映すための努力を怠らずにしてきた。音は南国、しかし、立ち尽くす我々の脳みそは冷えきってまるで北極。どちらを寒くさせて、言葉を積み上げるのかが重要だ。大切にしているのは、自分のスタンスだけだ。私以外の他人が、どれだけ不幸になったかなんて、何の意味もない。ここには、真実があり、偽りばかりが占めている、この秘密基地。何もかも失ってかますしかないって話だぜ。そうだろ。

 言葉の音が聞こえる。叩き続けたことで、マイクから飛び出してくる屁理屈。どうしたところで、爆笑が生まれるわけがない。爆発がやってきて、私たちを支配していく。手紙の中に仕舞われてしまった、白い雪を池の中に沈めて欲しい。癖を治す気なんて全くない、何故なら、この生き方と、この歩き方と、この戦い方には私の血が通っているから。でも、正直、捨ててしまってもいい。というか、どちらであっても問題ない。理由は簡単だ。私が優秀だからだ。どんな人生だったとしても、私の足音に変化はなく、進む道にも変更はない。血みどろになってしまっても、白い骨を抱いて生きていく、約束を、自分以外の人にも押し付けて来た。低い音と、抜けた音、アフタービートが心に刻んでくれる、愚痴とディスがたまらない。

 黒いスーツが、あなたを作り出した。革ジャンを着るのが、そんなに流行ってるのかなんて何の興味もないけど、ただ、ダサすぎて笑える。お前に創り出した藝術って何の価値があるの。こだわりなんて、その瞬間必要であればいいだけなんだから、積み上げて血を通わせることにもはや何の意味もない。もう少しだけ、進んでみようなんて考えじゃなくて、一気に、大きく、足を前に出す。それ以外にコツなんて存在しない。青い光じゃ、生気を吸い取られる。赤い空気を纏って、赤い光を吸い込んで、赤い情熱を捨て去って、自分というブランドを売り続ける。

 もう少しだけ、神に近くなる。

 言い間違いを押し付けて、自分の武器にする。

 これは、なんだ。

 マジックスパイス。

 誰にかける。

 誰がかける。

 誰が誰を食べる。

 笑っている。

 誰が笑っている。

 俺が笑っている。

 全員、殺して。

 俺が勝つ。

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