千年ぶりに現れたとかいう安倍晴明レベルの陰陽師はヘタレだけどやっぱり最強?!〜近所の奥さんに呪いをかけられたけど、夫(予定)が最強の陰陽師なので〜
宇部 松清
第1話 ヘタレ陰陽師、本家へ
皆さんお久しぶりです。
いや、初めましての人もいるのかな?
私の名前は
その配偶者予定の『土御門さん』との出会いはいまから約五年前。あたしがまだピッチピチの十九――まぁ数日で二十歳になったけど――の頃だ。なんかもうぶっちゃけ両想いじゃん? って思うことは何度もあったし、これはもうほぼほぼ告白されているのでは? とカウントしたくもなるようなことも数回――いや、数十、数百回あったんだけど、ものの見事に邪魔が入り、なんやかんやで五年である。
いや、なんやかんやで五年経つことある? コールドスリープでもしてた?
お前がどうにかすればどうにかなるんだよ! その心構えはあるんだよ!
だったら自分から行けよ、と思われたかもしれない。いや、私も、そっちの方が確実だろうなとは思ってる。
だけど!
だけどさ!
私だって告白されたいよ!
何せいまのいままでモテない人生送ってきたからね!? もう失恋のエキスパートよ! たぶん段とか持ってる! だけど、今回は違うの! 自分で言うのも何だけど、確実にあたしのこと好きなの、この人! この人、っていうか、この『土御門
なんかもう、名字との組み合わせで時代錯誤感が半端ないけど、あの、ちゃんと現代に生きてる人だ。まぁぶっちゃけ浮世離れしてる感は否めないけど。
慶次郎さんは、ここ、由緒だけは立派らしい『土御門神社』の次男坊である。いまのところは長男である歓太郎さんが神主になって継いでいる状態だけど、そのうち……まぁこっちについても近々と思いたいけど、彼が継ぐことになっている。というのも彼が、千年ぶりに現れたとかいう安倍晴明レベルの陰陽師だからだ。
慶次郎さんは、五年経ってもあたしに愛の言葉も囁けないようなスーパーヘタレ野郎なんだけど、陰陽師としては超一流なのだ。たぶん、いや、確実に日本一の人なのである。うん、ここに関してだけはね、マジのやつ。
そんで、その日本一のヘタレ陰陽師はというと、年に数回『本家』とやらに顔を出さなくてはならないようで(えっ、ここが本家じゃないんだ、って思ったのあたしだけじゃないよね?)、本当に半べそをかきながら歓太郎さんに手を引かれて行ってしまったのだ。歓太郎さんの話によると、毎回毎回ネチネチとお小言をちょうだいしているらしく、ハイパーコミュ障二十八歳児の慶次郎さんは、この時期になるとご飯も喉を通らなくなるのだとか。年子の兄に手を引かれて、マジでべそべそしてたっけな。
その姿を見かねたのか、
「ねぇ葉月、慶次郎が帰ってくるまでここに寝泊まりしてくれない?」
くぅん、ともふもふの金色耳をぺたりと寝せて、彼の式神其の一である『おパ(おからパウダー)さん』が懇願する。
「おっ、それいいな! 葉月がここで待ってると思ったら慶次郎もちょっとはしゃきっとするだろうしな!」
手のひらの上に、ポン、と拳をうちつけて、式神其の二、焦げ茶耳の『純コ(純ココア)さん』が尻尾をぶるんぶるんと振る。
「二人共、葉月の都合も考えずに勝手に話を進めてはいけませんよ。ただまぁ……、お布団一式は天日干ししてありますし、着替えも用意してますけど」
そんで、一見こっちに譲歩しているように見えるけどちゃっかり外堀を埋めてくるのは式神其の三、真っ白耳の『麦(小麦粉)さん』だ。
ケモ耳&もふもふ尻尾搭載のイケメン三人が、じぃっとこちらを見つめてくる。そんで、そのイケメン式神の製造者であるイケメン総大将(慶次郎さん)も歓太郎さんに引きずられながら、うるうると涙目で物言いたげに下唇を噛んでいる。
いや、これで断れる人間いる? いないでしょ。あのね、お付き合いこそしてはいないものの、ほぼほぼ両家公認だからね、あたし達。何でマジで付き合ってないのかな。
「わぁーかったわよ! いる! 日中は仕事行くけど、ここに帰ってくるから! 寝泊まりして待っててやるから、うるせぇ年寄り連中一列に並べて片っ端からビンタするくらいの気持ちで行ってこぉい!」
拳を振り上げて、激励するつもりでそう言った。なんていうか、こう、背中をね、ばっちーんってぶっ叩くイメージで。
すると彼は、「ここに帰ってくる」「寝泊まりして待っててやる」というあたしの言葉に瞳をキラッキラに輝かせたけれど、片っ端からビンタのくだりで一気に青ざめ、
「は、はっちゃん、暴力はいけません! まずは話し合いで!」
とぷるぷる震えながら首を振った。
こいつ、こういうのマジで全く伝わらねぇなと思いながら、
「気持ち! 気持ちの話だっつぅの!」
そう叫んだあたしである。
とにもかくにも、まぁたったの数日ではあるが、あたしは式神三兄弟であるケモ耳ーズと共に留守を預かることになったのだった。
が、まさかこのたった数日で、あんな厄介な事件に巻き込まれるとは、その時のあたしには全く想像出来なかったのである。
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