脳内殺人倶楽部
@sicks6s
完結
僕には「自分にとって都合の悪い人間を殺してしまう妄想をする」という癖がある。
もうかれこれ10年は治らない癖だ。僕はコレを治すのを諦めるどころか“脳内殺人”だなんて呼んで親しみを持って接している。
「何笑ってるの?」
僕が教壇に立っている担任の数学教師を今月59回目の脳内殺人をしていた時に隣の席の彼女が僕の顔を覗いて言った。
「別に、なんでもないよ」
僕は笑顔で答えた。「脳内で数学教師を轢死させる妄想をしてました」だなんて言えるわけが無い。
彼女は怪しげな目つきでしばらく僕を見つめていたが、ふーんと言いながらやがて視線を前に戻した。
かわいい。
「そうだ。僕は今君の質問に答えたから君もひとつ僕の質問に答えてもらってもいい?」
「別にどうぞ」
僕は彼女の横顔を見ながら質問をした
「好きな人とかいるの?」
「…え…?」
驚く彼女
「だから好きな人とか居るのかって聞いてるんだよ」
僕は少し苛立ったように言うと彼女は目を丸くしながら答える
「いや……いないけど……」
その言葉を聞いて僕はほっとしたような残念なような気持ちになった
「じゃあ俺にもまだチャンスはあるんだね」
僕は彼女に聞こえないように呟いた
「何か言った?」
彼女が不思議そうに聞く
「ううん、何でも無いよ」
僕が答えると彼女は首を傾げたあと再び黒板の方を向いてしまった 。しかし今度は頬杖を突きながらこちらの様子を窺っているようだった。 僕もそれに気づいていないふりをして授業に集中しようとする
「……」
2人を沈黙が包む
「あのさ、その、僕たち付き合わない?その…僕結構君のこと好きだし…まあ、もちろん君がよかったらでいいんだけど」
「はァ!?冗談ならやめてよね…それにさっきあなたの質問には答えたんだからもうこの質問に答える義務は無いでしょう?」
彼女が慌てながら早口で言う
「いや、さっき僕は君の『何か言った?』に答えたから君も2回目の回答をする必要はあるよ。」
「……」
彼女は黙ったまま俯いている
「やっぱり嫌だよね」
苦笑いを浮かべた僕に彼女は言う
「その…なんか…ごめんね…」
僕の頭のどこかでぐしゃりと誰かが倒れる音がした。
脳内殺人倶楽部 @sicks6s
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