幼馴染は髪を結う ~清楚系美少女の転校生は俺の前でボクっ娘に変身する~
蒼田
1.
「
「あっそ」
興味津々と言った雰囲気で男子高校生が机の上に突っ伏す俺に声かけた。
友人は俺の素っ気ない返事を気にせず話を続ける。
「何でも......女子らしい」
顔を近づけ囁くように彼は言う。
少しだけ顔を上げてすぐに顔を元に戻した。
起きたらそこに野郎の顔があるなんてどんな地獄だ。一部女子には需要があるかもしれないが、少なくとも俺にはその気はない。
俺の反応に「なんだよ。つれないな」と呟きながら椅子に体を戻すが、転校生が女子というだけで心躍る俺ではない。
「……そんなんだからもてないんだよ」
「んだよ快清。彼女いない歴イコール年齢のお前が言うか? 」
「それを言われると悲しいが、少なくともその組み合わせに特殊性を感じない。そもそも女子ならこの学校に半数以上いるだろ? 」
「そうは言うがよ。転校生で女子っていったら恋愛の始まりだろ? 」
「現実に夢を反映させるな。ロマンチスト」
「俺はロマンチストではない。二次元に生きる冒険者だ」
わけがわからん、とだけ言い更に顔を沈める。
彼が悪いわけでは無い。その趣味も認めよう。しかし俺に押し付けるようなことはやめてほしい。
ゲームやアニメや小説が嫌いなわけでは無い。むしろ好きな方だ。
だけれどそれを教室の中で、しかも大きな声で堂々と言うのは些か眉を顰めざるをえない訳で。
加えて俺もその巻き添えを喰らっているわけで。
彼のその堂々とした振る舞いはある意味見習うべきだろうが、そのおかげで俺は学校の中でアニオタに分類されていた。
確かに好きだが、オタクという程ではない。嗜む程度だ。俺程度の知識でオタクに分類されると本物のオタクに失礼だ。
出来るのならば周りの誤解を解きたいところだがその噂が流れて早一年。もうどうしようもない。
なので周りの痛い目線から逃れるべくこうして机に頭を沈めていた。
友人の演説が長々と続く中どんどんと教室が賑やかになってくる。
朝練を終えた運動部員の駆け込む音に今を生きる女子高生達の黄色い声。
チャイムが鳴り、顔を上げると扉が開かれ教員が入って来る。
朝の挨拶をすると教員が言う。
「あ~、連絡事項、というか転校生が来た」
頭を掻きけだるそうに言うが、そこは「来た」ではなく「紹介する」じゃないのか?
しかし疑問に思ったのは俺だけらしく、ぐるりと周りをみると好奇の目線が教員に向いていた。
それを受けて溜息をつくがある男子が「女子ですか! 女子ですよね! 女子と言ってください! 」と声を上げた。
物凄い自己主張だがこれもし男子だった場合彼はどうするのだろうか。
絶望に打ちひしがれて今日一日使い物にならなくなるかもしれない。
いやもしかしたら最近流行っている「男の娘」というやつで彼は腐の道へのフラグを立てた所かもしれない。
彼には今後強く生きて欲しい。
......こんなことを考えるようになったことを考えると彼の影響力のすごさを思い知らされる。
「入ってこい」
俺が考えていると教員が扉に向かって声をかけた。
ガラガラガラと音を立てゆっくりと扉が開く。
入って来たのか「おお! 」という声が周りから上がる。それにつられるように俺も顔を向けると紺色のブレザーを着た、黒髪ロングの清楚系美少女が一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと歩いている。
その清楚さに気圧されたのか最初の歓喜にも似た声は静まり返る。
逆に彼女の学校指定のスニーカーが床を踏みしめる音が部屋に響く。
そして教員の隣に着くと九十度反転し全体を見た。
(? )
全体を見た一瞬、俺の方をみて目を見開いた気がした。
彼女が知り合いならば創作物で言う所の「久しぶりに会ってドッキリ」みたいな流れになるのだろうが、生憎俺に清楚系美少女の知り合いはいない。
加えるのならば朝ラブコメハプニングも起こしていない。
よって俺は彼女と知り合いではないはずなのだが……、俺の気にしすぎか。
「じゃぁ自己紹介をしろ」
そう言いながら教員は名前を書くために黒のマーカーを手に取りホワイトボードに向いた。
一拍置いて彼女が自己紹介を始める。
「今日からこのクラスでお世話になります、
ゆっくりと、しかしはっきりと言う。
きゅっ、きゅっと音が鳴る中ペコリと彼女はお辞儀した。
その動作に遅れて周りが騒がしくなる中俺は「まさか」と驚いた。
ニコリと笑みを作る彼女は小学校の頃転校した俺の――幼馴染だ。
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