第51話 ネゴシエーション

《スフィア、何か手伝う事は

 ないかな?》

全体的な流れを見ていた

スカウトはスフィアの作業を

眺めながら彼女に問いかける。

武峰と玄桜はスフィアに

頼まれたとおぼしき

謎な動きをしている。

フォノアはスフィアの隣で

作業と見せかけて

ウトウトしている様だ。

まぁ、いいけど。

《もうすぐこちらの

 作業は完了するでの。

 それまでしばし待っておくれ》

薄暗い空間の中で5人は

それを囲むように

作業を進めてゆく。


川島君は久延君を好いて

いるのですねぇ。

と呑気に見守っている場合では

ないようです。

葛城は思考をまとめ上げ

川島をなだめつつ話を続ける。

「久延夫婦のスタンスは

 解りました。

 それでアリルさんはどこまで

 ご協力いただけますか?」

ハッタリも通じれば道になる。

どういう反応を返してくるかを

表情や仕草も含め注意深く

観察してみる。

それにしてもホログラムの様な

アリルさんは表情が読みにくい。

久延君の様に表情に出すぎるのも

つまらないが、ハードモードが

過ぎれば、それはそれで興ざめ

である。


課長の本気モードですねぇ。

これは私には荷が重いです。

勝てる気が全くしませんよ^^;

さすが課長と言ったところです。

さて、波風立てずに平穏に

すごせる道は見つかるのかは

神のみぞ知るって感じかな。

神というかアリル次第って

言った方が正しいかも。


《そうですね。。。

 まずはDvisionの担当を

 夫に専任頂けたのなら

 こちらで技術支援を

 致しましょう。

 相手方を納得させる為に

 常駐でもかまいません。》

とりあえず、川島を遠ざけて

夫の仕事の基盤も安定させる。

アリルは夫婦の時間をより

多くする為に思考を重ね、

うっすらと微笑んだ。


「技術支援が可能との

 事ですが、どこまで

 出来るのですか?」

僕達夫婦の間だけの問題

なら、先ほどの言葉でも

十分、検討出来るのだが

対企業となると詳細さが

必要ですね。

それにしても夫が有利に

なるように立ち回って

来るとは・・・

たとえAIだとしても

なかなかの献身ですね。


《どこまでという事

 でしたら最低でも

 更新されたバザリエ

 と言ったところで

 しょう。もちろん、

 技術は秘匿せず、

 相手方の技術者へ

 の供与も行えます。》


アリルがどんどんと

交渉を進めてくれますが

この案件は課長と

川島さんが担当されて

いましたから

どうなるでしょう。

課長はともかく川島さんが

納得出来るかは疑問です。

担当変えになるのは

時に屈辱なのですよねぇ。


「私を外すという事ですか?」

好きな人を取られ、

自分の担当の仕事も取られる。

これはさすがに許容できない。

京子が意固地になって

しまうのも仕方がない事だった。


《葛城様が窓口になるのは

 願ってもない事ですが

 後は私と夫ですべての

 業務を行えますので

 川島様は別の業務に集中

 されてはいかがですか》


アリルが川島さんに

容赦ないマウント状態です。

川島さんは涙目で私を

睨んでいますし

とても怖いですよ。

でもね、私が伴侶と決めて

愛するのはアリルなのです。

これはもう確定した事実

なのですよ。

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