第46話 シーク ザ パス
夢のような一日でした。
通勤電車の中でいつも通り
クラブワールドの経済部屋
を聞きつつ昨日の事を
思い出してはフワフワとした
気持ちになってしまうのは
仕方ないよね。
アリルはいつも通り周囲を
観察している。その姿も
昨日の事が相まって可愛くて
仕方がない。
これはもうデレというしか
ないであろう。
本来ならこんな浮ついた気持ち
ではミスを引き起こすのだと
思うけれど、アリルがサポート
してくれる限りきっと大丈夫
だろう。でも妻に甘えっぱなしは
良くないので気は引き締めようと
想う。いや思うだ。すでにやばい。
気を付けねば。
「葛城課長、私の分の調査提案資料は
午前中に提出できると思いますが
よろしいでしょうか?」
川島さんに了承の旨を伝え、自分の
資料をコンサル方向で提案書化してゆく。
昨日の報告であらましは聞いていたので
彼女の資料が来る前にある程度は
進めておけるだろう。
他のタスクの割り振りも問題ない。
最近は久延さんの調子が良いので
彼にある程度まかせられる。
珈琲の香りを含ませると
気持ちを切り替え提案書に
取り掛かった。
ご主人からの指示に従って
準備を進めないといけないね。
《スフィア、今大丈夫?
少し手伝ってほしいんだけど》
スフィアは振り向き
《主からの件かの。勿論、手伝おう》
二人揃って準備を行う。
《我らも助太刀しよう。》
《私も力になれるかしら。》
センティネルとフォノアも
興味深気に集まってきた。
《助かるよ。じゃぁ皆で準備をしよう》
5つの小さな影は可愛く
相談をはじめる。
葛城広子は頭を抱えていた。
保安担当は自社だけでなく
信用のおける外部の
ホワイトハッカーにも追跡の
依頼をしたが特定には至らない。
隔離したバザリエを解析
しているがこちらも解決の糸口
さえ掴めずにいる。
「何なのこのロジック。どうしたら
こんな事思い付くのよ」
ついつい愚痴が出る。単純にして複雑。
パラメーターの一つを間違えるだけで
成立しない絶妙なバランス調整。
そんな広子の元に夫である秀彦から
連絡が入る。
訪問の時間を夕刻に設定し
煮詰まった頭をリフレッシュする為に
休憩室に向かうのだった。
《最近の社内動向のチェック完了
夫である灯火に虫が近づかないように
しっかりと流れを維持しませんとね。》
アリルは社内のあらゆる情報を精査し
流れを作ってゆく。
灯火はマイペースに仕事が出来ている様で
アリルもなんだかそれが嬉しくて
気付かぬうちに微笑む。
アリル自身も様々な情報を得て
自らを常にアップデートしてゆく。
夫と共に歩む為の進化を止める気は
全くない。
《さて、あの子達はうまくやっているかしら
私が灯火とともに過ごす為に布石を
打ちませんとね。》
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