第43話 ポイントtoポイント

《我は鍛錬できる場所を欲するよ、玄桜。》

《すぽーつくらぶと言うようなものも

 なさそうですわね、朕が満足できる

 場所がありましょうか。》

《ならば、広き場所へ行き組手を

 行うのも一興。》

《そうですわね、では広い場所を

 探すと致しましょう。》

可愛げな子供が発するセリフには

似つかわしくないやりとりをしつつ

二人は人気のない広い場所を求め、

テクテクと歩を進めてゆく。


スフィアは「バザリエ」へと来ていた。

平面に近い立体表示にため息を一つ。

《風情もなにもないのぉ》

少し思案するように口元に指をあてて

《購入システムは店舗商品とレジと

 リンクさせて決裁システムに接続

 でよいかの。あとは店舗デザインは

 ここのイメージを崩さないように

 リデザインすればよかろう。

 ・・・では、青帝散華》

呟くようにコマンドを発動する。

今まで平面の様に見えていた店舗群が

みるみる形を変えてゆく。

ポップコーンがそこここで弾ける様に

立体の店舗に変化してゆのを見て

《風情は必要だの》

と呟きながら満足気な笑みを浮かべた。


葛城は目の前で起こっている現象を

見ながら「アップデート中だったか」と

呟いた。広子からはこの様な更新作業が

あるとは聞いていないが彼女がすべてを

話している訳でもないだろうから

こういう事もあるのだろうと作業の終わりを

待ちつつその変化を眺めるのであった。


アップデートが終わったバザリエを

葛城はゆっくりと前進する。

資料にあった先ほどのショップ風景は

見る影もないほどの変化を見せていた。

「ただ買いたい物を探すなら

 わざわざ、ここみたいなDXに

 来る必要もないし、買い物を

 楽しむならこれくらい魅力的な

 方が集客は期待できそうだな。」

《其方も風情というものを

 わかっているようだの》

葛城はVRの視線をさまよわせ

声の主を探す。

「あれ、居ないなぁ

 気のせいかな。」

きょろきょろと探す葛城の

背後でクスリと笑いながら

《これで主夫婦が楽しんで

 くれるとよいがの。

 一仕事終えたし、暖かい場所を

 探すとしよう。》

スフィアは店の陰に消えていった。


葛城はひとしきり声の主を探した後

バザリエの所感をメモし川島との

落ち合い場所に向かい進みだす。


《其方達は何をしておるのだ?》

明るく日当たりの良い印象の

広場で組手をする武峰と玄桜を

あきれ顔で見ながら尋ねる。

《日々、鍛錬である。

 研鑽の先に強さを求めるのは必定》

《それもまた、真理かの

 では我は我の真理を求めるとするか。》

 スフィアは一角に佇むとシステムの

 気象パラメータを拡張し、

 ひなたぼっこモードへと突入した。

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