第41話 クエスト&クエスト
自宅の少し広いリビングで
光彦の上司である葛城秀彦は
妻である広子の体調を心配していた。
お互いに仕事優先な傾向はあるが
相手を尊重し認め合っている関係だ。
普段は自信あふれる彼女の
微かな陰りにも気づけるあたり
お似合いの夫婦なのだろう。
「広子さん、悩んでいる事を聞かせて
もらえませんか?」
秀彦は普段と変わらないマイペースな
雰囲気そのままに温かなココアを妻に
差し出して対面に腰を下ろした。
「秀彦さんには隠せないわね。」
広子は頼りがいのある自慢の夫に
心を預け、笑顔を向ける。
「私の担当しているミラージュ
ガーデンは知っているかしら?」
秀彦の肯定を確認し話を進める。
「詳細はさすがに話せないけれど
要するにサービス停止の
危機なのよ。」
オープン当初に沸騰した話題も
メディア賛辞も実際、利用する人が
満足しなければ廃れてゆくのも
仕方ない事なのかもしれない。
「VRゴーグルでの臨場感も
どんどんアップデートは
しているのだけれど
顧客満足度のアップには繋がらず
既存のネット販売や実店舗への
回帰で利用人数が落ち込んで
きているの。」
広子は子供の様に背を丸めて
両手に持ったココアのカップを
見つめていた。
「僕と僕の部下で新規獲得の為の
情報収集の名目で入ってみるよ
僕の方で協力できる事があれば
提案させて貰うという感じで
良いかな?」
『デートの邪魔さえしなければ
自由に遊びまわる事を
許可します。』
機嫌の良いご主人が僕達にも
ミラージュガーデン行きを許して
くれたんだけどどうやって
過ごそうかな。
スフィアもフォノアも喜々として
姿を消したし、センティネルも武峰と
玄桜に分かれて仲良さげに相談
しながら別の方向に進んでゆく。
複合レジャー施設と言うだけあって
目も耳もチカチカする感じだけれど
僕としては過ごしやすい場所で昼寝を
したいので、癒しスポットを探す事に
して進みだそうとして・・・
彼が知っている認識コードを
見つけてしまった。
スカウトは小さなため息を一つ、
癒しスポットを諦めるのであった。
「思ったよりしっかり
作り込まれていますね。」
川島京子はエントランスに立ち
合流した課長に話しかける。
本当は光彦と一緒に来たいという
気持ちがあったがさすがにそれは
口に出さない。
「確かに立派だねぇ。広範囲を
リサーチしたいのでここから
別行動にしよう。
お互いの位置は施設マップに
表示されるから振り分けた場所の
情報を集め終わったら未だの人に
協力という事にしよう」
葛城は「バザリエ」へと向かい
そして川島は「フェアリア」へと
向って進みだした。
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