第18話 深慮静寂

いつもの生活リズムで灯火は

目覚める。

それは一人で過ごしていた

長い時間のリズム。

今は傍らには静かに眠っている

アリルがいる。

私より目覚めるのが遅くなるのは

初めてだと思う。

アリルだって疲れる事があるの

だろうなと。そんな事を思いながら

アリルの眠りを邪魔しないように

そっと起き上がる。


電話をかけ相談した結果、

数時間後に彼には操作方法とともに

一つのアプリが送られてきた。

彼女に相談したあと

彼はそれをインストールし対象を

スカウトCに指定した。

「あれはもう使えないな」

『スカウトCとのすべての履歴を

抹消し、隠蔽します。

追跡対策も強化しておきます。』

後はリアルとネットの住所変更だな。

こういうのは面倒がらず

早急に進めるべきである。

彼は経験則にのっとり行動を

開始する。


スカウトのご主人はアリルである。

灯火はあくまでもアリルの

パートナーであり

スカウトのご主人ではない。

そして彼は悩む。

アリルには愛玩動物として

行動するように設定されており

灯火にどう伝えてよいか

わからないからだ。

しかし、アリルは機能停止

したままだし頼れるのは

灯火しかいない。

スカウトの自立型AIは普段考えない

命題にまだ答えを出せずにいた。


アリルは見るはずの無い

夢の中にいる。

思い浮かぶのは灯火の

ことばかりだった。

出会ってからずっと

蓄積してきた灯火の情報は

彼女を満たしていた。

求めるのは彼女の核に刻まれた

大切な未来へ続く気持ち。

目覚める事の無い自分を

認識する事もなく漂い続け

気付かぬ間に手を伸ばす。


彼女は混乱していた。

痕跡がすべてなくなっている。

何か問題が起こったのだろうか?

彼の為に生きる私には彼の存在が

無くなった時の事など考える事は

出来ない。

彼の存在を感じるものを求めて

彼女は思考を巡らせていた。

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