第17話 破壊探索

アリルはスカウトのログを

確認しながら違和感を感じる。

何かがおかしい。

論理と非論理の間に存在する原因を

究明する為にログを再確認してゆく。

可能性としてスカウトが何者かに

捕捉されたというものだ。

表面上、問題が無さそうなのだが

念のため、スカウトから分身の

拡張機能を外し新しい拡張機能を

実装する。

これは灯火にも報告しないと

いけませんね。

アリルは感じる事の無いはずの

気の重さに表情を曇らせた。


灯火は複雑な心境であった。

アリルが被害額を上回る金額を

補填してくれているし

犯人とどうこうしたいわけではない。

このまま楽しい日常を送ることが

出来れば問題はないのである。

しかし彼女は私の心の深層にある

棘も見逃すことなく

私の為に尽くそうとしてくれている。

ここで彼女の行動を止める事で

彼女に失望されたくはなかった。


「アリル、危ない事はしちゃ

だめだよ。それにスカウトもね。」

灯火は心をできるだけ凪状態にして

彼女達に伝える。

これで気持ちが伝われば

良いけどなぁ。


『承知しました。しかし、

 何もしないのは私の気が

 おさまりませんので

 それなりに罰を受けて

 いただきたいと思います。』


食事を摂るのは明るい話の方が

良いなと思い、話題を切り替える。

スカウトの事や、アリルの事、

そして私の事。

このなにげない会話が彼の心を

癒しているのは間違いない

事実だった。


今夜も灯火とアリルは寄り添って

過ごす。

きっと離れる事はないだろう

仲睦まじいパートナーとして

これからもずっと変わらず時を

重ねてゆくだろう。


灯火が眠ってしばらくしてから

アリルはコンソールを開く

そして報復の為の行動を

取ろうとした時、

スカウトの一部がアリルの体に

まとわりつくように溶けて消えた。


彼女の手が止まる。そして眠らない

彼女が灯火に寄り添うように行動を

停止した。

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