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回文短歌風(ついに目標(366)到達か?) 五十首詠 351-400


01(351)

 武者逆手 狸居り 今朝際 徽安門 秋は来さけり 折りて重さむ

 むささかて りをりけさきは きあんも(ん あきはきさけり をりてかささむ)


  きあん‐もん【徽安門】

   平安京内裏内郭十二門の一。北面し、玄輝門の西にある。西廂(せいそう)門。


02

 小野も島 蝉に飛びつ間 河原は 和歌待つ人に 見せましものを

 をのもしま せみにとびつま かわはら(は わかまつひとに みせましものを)


  柿本集(かきのもとしゅう) 成立年時未詳(※700年前後)

  00101 わかやとに-さけるあきはき-あきならは-わかまつひとに-みせましものを


03

 焼べる死の 問ひ虚しやれ 民の手の 乱れやしなむ 人の知るべく

 くべるしの とひむなしやれ たみのて(の みだれやしなむ ひとのしるべく)


04

 胸も借り 鳶を良しかな 悲し遺児 長々し夜を 一人かも眠む

むねもかり とびをよしかな かなしい(じ ながながしよを ひとりかもねむ)


05

 待つ河も 知の蓮得たし 小忌の衣の 身をしたえすは 後も我が妻

 まつかわも ちのはすえたし をみのい(の みをしたえすは のちもわかつま)


06

 破すは閼伽 喪忌む背に名も 問ひ掛けか 人もなにせむ 妹が合わすは

 はすはあか もいむせになも とひかけ(か ひともなにせむ いもかあはすは)


  あか【×閼×伽】

  《(梵)arghaの音写。価値の意。功徳水 (くどくすい) と訳す》

   1 仏に手向ける水。閼伽水 (あかみず) 。閼伽の水。

   2 仏前に供える水を入れる器。閼伽坏 (あかつき) 。閼伽器。


07

 他人事は 咲く野の草と 湿気る春 罌粟と咲く野の 草は何処問ひ

 ひとことは さくののくさと しけるは(る けしとさくのの くさはどことひ) 


08

 守変わる 布告名もとぞ 気咎めか とき外もなく 媚ぶ我が身か

 かみかわる ふこくなもとぞ きとがめ(か ときそともなく こぶるわがみか)


09

 稭並みを 妻を衒うの 耽りおり 京の裏手を 待つ女郎花

 しべなみを つまをてらうの ふけりお(り けふのうらてを まつをみなへし)


10

 寝火の死の 早よ濡らかすや 逃げ込む子 げに安からぬ 夜半の忍び音

 ねびのしの はよぬらかすや にけこむ(こ げにやすからぬ よはのしのびね)


11(361)

 長く揺れ 句果の裸足の 思案点 葦の下葉の 隠れ行くかな

 ながくゆれ くかのはだしの しあんて(ん あしのしたはの かくれゆくかな)


12

 草摘みし 木津の真野の間 恋花は 生駒の山の 月し見つ咲く

 くさつみし きづのまやのま こいばな(は いこまのやまの つきしみつさく)


13

 妻の死よ 身磨る吉外 問い詰めつ いとど其方霧る 住吉の松

 つまのしよ みするきちそと といつめ(つ いととそちきる すみよしのまつ)


14

 罪の卦か 馬屋伏す六十を 気遣うか 月をぞ結ぶ 山蔭の水

 つみのけか まやふすむそを きつかふ(か つきをぞむすぶ やまかげのみづ)


15

 真野の野路 世見る画家に目 叶える絵 眺めにかかる み吉野の山

 まやののじ よみるがかにめ かなえる(え ながめにかかる みよしののやま)


16

 木揺らしの 葉似る罪そは 埒外か ちら葉ぞ満つる 庭の白雪

 きゆらしの はにるつみそは らちがい(か ちらはそみつる にはのしらゆき)


17

 斑草や 菜葉に姿問ひ 睦み編み 摘む人なしに 花や咲くらむ

 むらくさや なばにしなとひ むつみあ(み つむひとなしに はなやさくらむ)


18

 宿し名も 光る袈裟には 木の型か 軒端に避ける 甲斐も無ししゃと

 やどしなも ひかるけさには きのかた(か のきはにさける かひもなしとや)


19

 罪の猪の 魔夜に飛び折る 追伐は 凍つるを人に 山の井の水

 つみのゐの まやにとびをる ついばつ(は いつるをひとに やまのゐのみつ)


20

 村酒に 古都の名は祖語 杞憂参 雪こそ花の 床に敷くらむ

 むらくしに ことのなはそご きゆうま(う ゆきこそはなの とこにしくらむ)


21(371)

 村辻や 鹿に愛づ田は 名立つ夏 棚機つ女に 加持やしつらむ

 むらつじや しかにめづたは なたつな(つ たなはたつめに かじやしつらむ)


22

 土佐の作 買うや退くなら 痛快か 鶉鳴く野や 深草の里

 とさのさく かふやのくなら つうかい(か うづらなくのや ふかくさのさと)


23

 村骸 此処の鳶やも 忌明け酒 秋靄人の 心汲むらむ

 むらむくろ ここのとびやも きあけざ(け あきもやひとの こころくむらむ)


24

 繁吹き烏か 御酒は八っ飛び 残す明日 これ一つ屋は 君が憂き節

 しぶきうか みきはやっとび のこすあ(す このひとつやは きみかうきふし)


25

 長く富み 変わるる気まで 借屋日に やがて紛るる 我が身溶くかな

 なかくとみ かわるるきまで かやにち(に やがてまぎるる わがみとくかな)


26

 名は残し 手鳴る様避け 譲る春 露気冷まさる 撫子の花

 なはのこし てなるさまさけ ゆづるは(る つゆけさまさる なでしこのはな)


  源氏物語(げんじものがたり)成立年未詳。八十八.

   よそへつつ-みるにはこころ-なくさまて-つゆけさまさる-なてしこのはな


27

 取る弓矢 怪我の傷染み 野仏と 仄見し杉の 影や見ゆると

 とるゆみや けがのきずしみ のぼとけ(と ほのみしすぎの かげやみゆると)


28

 囃し魔は 夜間の印の 御陰下げ 神の印の 真夜はましまや

 はやしまは よまのしるしの みかげさ(げ かみのしるしの まよはましやは)


29

 皆も問ひ ふと戸に貝や 出端罠 はてや如何にと 問ふ人も波

 みなもとひ ふととにかいや でばなわ(な はてやいかにと とふひともなみ)


30

 屠蘇の文字 依怙は身形よ 爪皮か 松より並は 肥下の外

 とそのもじ えこはみなりよ つまがわ(か まつよりなみは こえしものそと)


  源氏物語 成立年未詳。二百三十二。

  うらなくも-おもひけるかな-ちきりしを-まつよりなみは-こえしものそと


31(381)

 破瓜の盛る 雪は煮付けの 謎掛けか そ汝の消つには 消ゆるものかは

 はかのもる ゆきはにつけの なぞけ(か そなのけつには きゆるものかは)


  ※「そ汝(謎)」を「ひと(問ひ)」に戻せば、源氏物語三百七十二の本家取りになる。


32

 形見なる 図置く寡夫夜に 妻の児の 待つに夜深く 落つるなみだか

 かたみなる づおくかふよに つまのこ(の まつによふかく おつるなみだか)


33

 折り変はる 花果に香りよ 小鳥寄り 事より他に かかるばかりを

 をりかはる かかにかほりよ ことりよ(り ことよりほかに かかるばかりを)


34

 消ゆる船 坂に景色と 残る鶴 このとき時化に 重ね降る雪

 きゆるふね さかにけしきと のこるつ(る このときしけに かさねふるゆき)


35

 闇の標 霊を悲しき 友記し 元岸中を 恨めしの宮

 やみのしめ らうをかなしき ともしる(し もときしなかを うらめしのみや)


36

 長き世路 古都の夜塗り 飛び交ふか 一人塗る夜の 所狭きかな

 ながきせろ ことのよるぬり とびかふ(か ひとりぬるよの ところぜきかな)


37

 長き死か 綱は木納屋の 瑠は友と 春の柳は 懐かしきかな

 ながきしか つなはきなやの るはとも(と はるのやなぎは なつかしきかな)


38

 島鳩か レダは目覚めの 息示し 奇異の目覚めは 誰か問はまじ

 しまばとか レダはめざめの いきしめ(し きいのめざめは だれかとはまじ)


39

 島無しも 利子は取りけり 母屋借りか 矢守蹴りとは 知りもしなまし

 しまなしも りしはとりけり もやかり(か やもりけりとは しりもしなまし)


40

 綴れ花 賽に差し反古 目見の意の 見まく欲しさに 誘はれつつ

 つづれはな さいにさしほぐ まみのい(の みまくほしさに いざなはれつつ)


41(391)

 島等賭け 殿はロココの 瑠張る夜 春の心は 長閑けからまし

 しまらかけ とのはろここの るはるよ(る はるのこころは のどけからまし)


42

 伝ふ湯の 妻に間に間の 見流すか 波の間に間に 松の湯二つ

 つたふゆの つまにまにまの みながす(か なみのまにまに まつのゆふたつ)


43

 真野の野路 黄泉も罪の卦 消ゆる昼 雪気の水も み吉野の山

 まやののし よみもつみのけ きゆるひ(る ゆきげのみづも みよしののやま)


44

 鳴かす気か 遠く行き捨て 強く裂く 寄って過行く 不如帰かな

 なかすきと とほくゆきすて つよくさ(く よつてすぎゆく ほとときすかな)


45

 毛描き鶴 対の岫の地 まやかしか 山地の菊の 出づる月影

 けがきづる ついのくきのち まやかし(か やまちのきくの いづるつきかげ)


46

 張子なる 罪と無き名は 毎度かと 今は無き名と 見つる名残は

 はりこなる つみとなきなは まいどか(と いまはなきなと みつるなごりは)


47

 岸中で 粘土も世の吉 奏づれつ 長月の夜も なべて悲しき

 きしなかで へなもよのきつ かなづれ(つ なかつきのよも なべてかなしき)


48

 根の凍むる この谷鳶の都 幸の園 千里の人や 残る虫の音

 ねのしむる このやとびのと さちのそ(の ちさとのひとや のこるむしのね)


49

 宮の世の 夕凪思ひ 小袖当て そこひも翁 冬の夜の闇

 みやのよの ゆうなぎおもひ こそであ(て そこひもおきな ふゆのよのやみ)


50(400)

 怪我のケア リア充居りて 上方か 身がてりを宇治 有明の影

 けがのけあ りあじうをりて かみがたか みがてりをうじ ありあけのかげ)

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