あざと可愛いヒジリ君は無表情リアちゃんに好かれたい

高山小石

第1話 金髪の転校生

 川澄かわすみ莉愛りあは、転校生が来るという話を、5年生の始業式で聞いた。

 この小学校で転校生はめずらしくない。みんな「そうなんだ」くらいにしか思っていなかった。五月の連休明けまでは。


「今日からひじり君もクラスメイトです。仲良くしてくださいね」


 担任の守野もりの先生がにこやかに紹介したのは、見慣れた転校生じゃなかった。


「はじめマシテ。ひじり=セイ=フォワード、デス。ヨロシクお願いしマス。ヒジリと呼んでくだサイ」


 たどたどしい日本語で挨拶したのは、白い頬を赤く染めた、天然の金髪男子だったのだ。


 色素の薄い姿で緊張している様子に、莉愛は(小犬みたい)と思った。


「ほっそ」

「ちょ、可愛くない?」

「あー女子だったらなー」


 天然金髪の可愛い系男子に、教室は大興奮に包まれた。

 

川澄かわすみさん、ひじり君をよろしくお願いしますね」


 守野先生に、莉愛は一番後ろの席でうなずいた。


(隣に増えてた机とイスは転校生用だったんだ)


「わかりました。ひじりくんて日本語どこまで理解できるの?」


 興奮していた教室がピシリと固まった。

 そんな空気をものともせず、莉愛は無表情に続ける。


「それがわからないと説明の仕方が決められないから、教えてほしいんだけど」


 莉愛としては、説明する相手が、日本語を理解できているのか、理解できるにしても聞き取りのみなのか、読むのも可能なのか。詳しい説明には英語が必要なのかを知りたかっただけなのだが。


「あいかわらず直球過ぎるだろ」

「笑顔を浮かべて優しく聞いてあげたらいいのに」

「せめて席についてからこっそり聞くとかさぁ」


 雰囲気の悪くなってきた教室に聖の嬉しそうな声が響いた。


「アリガトウ! ボクのコトバの理解のコト、ミンナと共有しようとしてくれたんダネ! 聞く言葉ほとんどワカル。でも、難しいコトバと、早いはムリ。ゆっくり一人がイイ」


「わかった。教えてくれてありがと」


 聖は莉愛の隣の席まで来ると、「カワスミさん、おセワになりマス」と青い目を輝かせて無邪気に笑った。

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