第19話 新たなる脅威①

白い炎の龍は巨大な炎となりデュラハンを燃やし尽くさんとして飲み込む。

白い炎に飲み込まれたデュラハンは、浄化の炎に抗う。

全身からドス黒い瘴気を溢れさせ、白い炎に対抗していく。

しばらくの間、白い炎と黒い瘴気のせめぎ合いが続いた。

そして突如白い炎が打ち破られ、白い炎の間から黒い瘴気が吹き出して来る。

吹き出して来た黒い瘴気で白い炎の龍は細切れになり消えていく。

「どれだけ瘴気を溜め込んでんだよ」

聖流は、デュラハンから溢れ出てくる瘴気の量に驚いていた。

周囲の空間を真っ黒に染め上げるかのように吹き出してくる。

「だが、無傷では無いようだな」

よく見るとデュラハンの鎧が所々溶けて穴が空いている。

溶けて穴の空いた所からは黒い瘴気が漏れ出ている。

かなりのダメージを与えられたと思いこれなら大丈夫だと思えた。

デュラハンの姿が一瞬ブレたと思ったら、目の前1mほどのところにデュラハンがいた。

30mほどの距離を一瞬で詰めてきた。

わずかな気の緩みを突かれ距離を詰められてしまう。

「な・・何」

デュラハンの右手の剣が聖流の左脇を切ろうとしたが、かろうじて破邪斬鬼丸で防いだがデュラハンの想像を上回る力で吹き飛ばされる。

地面の上を跳ね飛ばされ数回ほど転がってから立ち上がり破邪斬鬼丸を正面に構える。

デュラハンの体から溢れ出た瘴気が全て剣に集まっていく。

剣が黒い瘴気に覆われて、黒く巨大な刀身へと変貌していく。

黒い刀身は徐々に巨大化していき、五メートルほどの大きさになる。

黒い刀身にデュラハンの持つ力が全て込められているように思えた。

「それがアンタの全力の一撃になるのか、いいだろう。受けて立つ」

聖流は破邪斬鬼丸に陰陽師の使う氣と魔法使いの使う魔力を同時に流し込んでいく。

破邪斬鬼丸が蒼く輝き始める。

全てを清め、どこまでも蒼く澄んだ輝きを刀身に纏う。

デュラハンは言葉を話さないが、名乗りをあげているように思えた。

そして、聖流は自然と自らの名乗りを上げる。

「特級陰陽師神代聖流。参る」

デュラハンと聖流の間に風に飛ばされた枯葉が1枚舞い込んだ瞬間、両者は一瞬で距離を詰めそれぞれの剣を振るう。

「・・・・」

「蒼銀烈華」

蒼く輝く破邪斬鬼丸はデュラハンの剣に触れた瞬間、バターや豆腐を切るようにデュラハンの剣を簡単に真っ二つに切った。

そのまま、破邪斬鬼丸はデュラハンの鎧を切る。

鎧は袈裟懸けに斬られてゆっくりとずり落ちていく。

大地に真っ二つになったデュラハンの剣と鎧が音を立てて落ちた。

大地に落ちた剣と鎧から立ち上るデュラハンの黒い瘴気。

デュラハンの黒い瘴気は蒼い光に包まれ浄化され、やがて消えていく。

デュラハン鎧と剣から溢れていた禍々しい気配はやがて消えていった。

なぜか、デュラハンが戦いに満足して礼を言っているように思えた。

「魔物になる前のアンタに会ってみたかったな」

切り捨てられた鎧と剣を見ながら呟いていた。

聖流は力が抜け思わず片膝をつく。

「氣と魔力の同時使用は、身体への負担が大きい。まだ、長時間の使用は控えるしかないか」

そんなことを考えていたら、周囲にゾッとするほどの殺気が満ち溢れてくる。

慌てて周囲の気配を探る。

すると一人の若い男が立っている。

青い髪で白い肌。黒いスーツを着ている。

その男は拍手している。

「素晴らしい戦いだったよ。いや〜まさか、デュラハンが倒されるとは思わなかったよ。なかなかやるじゃないか」

その男からの殺気は減るどころかますます強くなってくる。

「貴様はいったい・・」

「あ〜、失礼した。名前を名乗っていなかったね」

男はポケットを探るように仕草をする。

「この世界では、挨拶に名刺と言うものを渡すと聞いていて作ったんだが、忘れてしまったようだ。うっかりしていた。失礼した。メフィスト。我が名は、メフィストだ。暁の鐘メフィストだ。覚えてくれたまえ」

「メフィスト。貴様が先ほどの魔物達をけしかけてきたのか」

「けしかけたなんてとんでもない。全てを破壊しろと命じただけです。神域もそこにつならなる全てを・・あらゆるものを破壊しろと、そこの関わる命あるものは全て蹂躙せよと命じただけですよ。ハハハハ・・・」

メフィストと名乗る男は、可笑しくて仕方ないといわんばかりに笑っている。

「何がおかしい」

「この世界はとても脆く儚い。だが人はそこにしがみついていながらそのことに気がついていない。神とそこに連なるもの達が危うい均衡を保たせているのに誰も知らない。貴方が命をかけて戦っても誰も貴方を褒めてくれません。貴方が戦いの果てに傷つき命を落としても誰も気にもしないでしょう。もしかしたら貴方のその力に気づいた人は貴方を恐れ迫害するかもしれない。それなのに戦う貴方が哀れだ。実に・・哀れだよ。そんなちっぽけな存在で戦い続けようとするなんてね」

メフィストは憐れむように、馬鹿にしたように見ている。

「何だと」

「邪魔なんですよ・・・貴方達が・・死んでくだい」

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