第五幕 ベランジェール・2場

◯ヤクーブ、次にベランジェール


ヤクーブ:

「出ていくのが遅いんだよ、キリスト教徒どもめ! この鐘の音が繰り返される間、この場所にとどまっていたせいで、俺の人生から奪った喜びの数分と同じ時間を、アッラーがおまえたちの人生から奪ってくれますように!」


ヤクーブ、タペストリーを持ち上げて:

「さあ、出てきてください! もうあいつらはいませんよ、ベランジェール! さあ……。聞こえないのかな?」


ヤクーブ、振り向く:

「忌々しいキリスト教徒どもめ! ベランジェール! ああ、俺の心臓は高鳴り舞い上がる。胸が張り裂けそうだ……!」


ベランジェール、登場:

「静かに……!」


ヤクーブ:

「来てくれた……」


ベランジェール:

「私たちだけ?」


ヤクーブ:

「はい、俺ひとりです」


ベランジェール:

「いいわ、よく聞いてね。まず松明を消して……」


ヤクーブ:

「何も聞こえない。二人は教会にいます。司祭の立ち合いで二人は結ばれる」


ベランジェール:

「もういい、もういいわ! ……他の話をしましょう。私はこう考えていたの、夜、ヤクーブがこの城の周りをさまよっていたとき、長い間あまりにも絶望していた目と思考を故郷に向けたことがあると思う。座ったまま、うなだれて、目をつぶって半分眠ったような状態で、時々、こんな夢を見たのではないかしら。

あなたは砂漠にいて、テントの中に座り、明るい雲を眺めている。一日の終わりに黄金の海の中で、大きくなった太陽が揺れ動き、眠りにつく。ラクダの乳房からミルクを搾るとき、ラクダの鈴が鳴るのが聞こえた。いつも従順なあなたの声に、忠実な馬がいななく……。あなたの隣には、西洋でベランジェールと呼ばれる外国出身の女性が座っていて、あなたの首に愛情を込めた腕を回してこう言うの。『ヤクーブ、あなたは幸せ?』って」


ヤクーブ:

「ああ! それではまるで、あなたが俺を主人だと思っているみたいじゃないですか」


ベランジェール:

「教えて。そういう夢を見たことがある?」


ヤクーブ:

「1000回! 1000回は見ました!」


ベランジェール:

「そのとき、突然音を立ててそばを通り過ぎた鹿がその魔法を解き、周りにあるものすべてが、あなたは哀れな裸の奴隷であること、夢が嘘だったことを証明したとしたら……。

そこへ突然現れた誰かが、悪魔か天使の力によってあなたの夢を実現させ、その見返りとして一日一瞬だけ、私の言うことを聞くように求めたとする! この一瞬の代価で、永遠の幸福を買うことができるなら、ヤクーブはどうする?」


ヤクーブ:

「俺の心を従順にして従わせる力を持っているのは、たった一人しかいません。それは、この甘い夢の中で俺が見つめているあなただけです」


ベランジェール:

「いいわ、よく聞いてね! ……あなたは、この夢のような現実を終わりにして朝を迎えることを望んでいる? 故郷の砂漠に帰りたい? サボテンの木陰にたたずむキャラバン隊、軽快で気まぐれな馬、テントの周りで寝そべる百頭のラクダたち、あなたの腕には恋するが欲しい?」


ヤクーブ:

「何かおそろしいことを聞こうとしているでしょう? ……でも、そんなの関係ない!」


ベランジェール:

「軽薄な音のようにヤクーブの言葉が逃げないなら、あなたは私にこう言ったわ。『もしマダムを傷つける敵がいたとして、敵があなたの日々に悪い影響を与えていて、死ぬだけであなたの苦しみを終わらせることができるとしたら、そいつはムハンマド自身から呪われる権利を授かった俺が呪ってやります。だから、敵が死んだ方がいいなら、マダムはそいつのことを俺に教えなければなりません』と。そう言ったわね」


ヤクーブ:

「確かに言った……震えてきた! 俺のそばにいる一人を除いて……」


ベランジェール:

「誰もいないわ!」


ヤクーブ

「復讐相手には、逃げる権利がある……」


ベランジェール:

「どうしても彼を討たなければならないとしたら? すぐに復讐を遂げなければならないとしたら?」


ヤクーブ:

「復讐相手の名前は?」


ベランジェール:

「サヴォワジー伯爵よ」


ヤクーブ:

「地獄だ! ……やっぱり、そうなのか!」


ベランジェール:

「伯爵よ、聞こえてる? サヴォワジー伯爵! よろしくて……?」


ヤクーブ:

「俺にはできない」


ベランジェール:

「じゃあ、永遠にさようならね!」


ヤクーブ:

「一緒にいてくれ……。さもなければ、俺があなたについていく」


ベランジェール:

「今まで信じていたのに……。なんて狂った信念なのかしら! 約束を破るのはキリスト教徒だけだと思っていたわ。私は間違っていた……それだけよ」


ヤクーブ:

「マダム……!」


ベランジェール、後ろを向く:

「ヤクーブは私に嘘をついていたの?」


ヤクーブ:

「俺の復讐とあなたの復讐が結びつかない理由を知っているでしょう。伯爵は俺の命を救ってくれた……。ああ、復讐相手が他の人だったら良かったのに」


ベランジェール:

「この六年間、宿命的な権力者としてヤクーブを苦しめた人が他にいるかしら?おお! 思い出して、思い出してよ……!」


ヤクーブ:

「マダム、すべて覚えています」


ベランジェール:

「伯爵はあなたの魂を奪った。ヤクーブ自身がそう言ったわ。あの人はヤクーブの故郷、両親、自由、喜び、愛を奪った……。彼はあなたに触れるたびに、幸福を奪っていく!」


ヤクーブ:

「そして、伯爵が俺の口に注いだあの水のことも……!」


ベランジェール:

「あの人がヤクーブを生かしたのは、後からあなたに千回の死を与えて苦しめるためじゃないかしら? あなたたちの間にある主従関係はまた均衡を取り戻そうとしている。彼はついにあなたを奴隷にした……!」


ヤクーブ、伯爵の署名を見せる:

「彼は俺を自由にしてくれた!」


ベランジェール:

「それは良かったわね! ……じゃあ、十年前にあなたから奪った自由を、私の愛とともに返してくれるのかしら?」


ヤクーブ:

「ちょっと待って、ベランジェール。話を聞いてくれ……」


ベランジェール:

「聞いているわ。早く言いなさいよ!」


ヤクーブ:

「思ったんだ……たぶん間違いだった……。俺をここに連れてきたことがそもそもの間違いだったんだ。ここにいてごめんなさい……」


ベランジェール:

「何のこと?」


ヤクーブ:

「あなたは俺を愛しているって……」


ベランジェール:

「ええ、言ったわ」


ヤクーブ:

「同じ運命同士、同じ愛で結ばれる。だから、ベランジェール、今夜は……」


ベランジェール:

「だから何?」


ヤクーブ:

「一緒に逃げよう!」


ベランジェール:

「復讐しないままで?」


ヤクーブ:

「伯爵はきっと後悔する。そのことが、あなたの復讐になり得るのでは?」


ベランジェール:

「あなたはやっぱり奴隷ね、私の心がそれほど卑しいと思っているのかしら? この世界で二人の男の恋人になり、最初の男が私を侮辱したというのに、二人目は最初の男に復讐することなく、二人とも生きているという事実に、私が耐えられると思うの? 私のように情熱的な心に、一方の愛が他方を食い尽くすことなく入り込むことができると思っているの? もしヤクーブがそう思っているとしたら、それは私への侮辱に等しい!」


ヤクーブ:

「ベランジェール……!」


ベランジェール:

「私たちの関係はおしまいね……。ここから消えなさい!」


ヤクーブ:

「許してください……!」


ベランジェール:

「私はこの復讐のために、臆病じゃない手と卑怯じゃない魂を必ず見つけてみせる。今のあなたが、愛のためだと言ってやらないことをお金の力でやり遂げる! もしできなければ、私自身の手でこの殺人を犯すことになる。憎しみを直視しながら、女たちの間に入り込み、新しい伯爵夫人に媚びへつらう召使いたちに紛れ込んで、この瓶の中身を婚礼のさかずきに空けることで、この結婚を中止させる!」


ヤクーブ:

「毒か……!」


ベランジェール:

「ええ、毒よ。私の後を追ってきて、愛と後悔を語るんじゃないわよ……この奴隷め……。どうするの? あと十五分しかないわ。彼が死ぬまでに必要な時間よりまだ長い。あと十五分……。ヤクーブ、質問に答えて。彼はあなたの手で死ぬの? 準備はできているの? 私はこれから……。答えなさいよ……」


ヤクーブ:

「明日にしましょう」


ベランジェール:

「明日ですって! 今夜、この部屋で、彼は私に言ったように、あの女に『愛している』って言うのよ! 明日……! それまで私はどうすればいいの? 夜、髪をかきむしりながら壁に頭を打ち付けて発狂しろというの! ああ、明日になったら、ヤクーブは私を嘲笑うつもりでしょ! もし今日が最後の日だとしたら? もしこの地獄の夜が永遠に続くとしたら? 神が望むなら実現できるはず……。明日……! もし私が嫉妬のあまり死んだらどうするの! あなたは嫉妬しないの? どうなのよ……?」


ヤクーブ:

「ああ……!」


ベランジェール:

「もし私が『あの人の腕の中で、何千回もの優しい愛の鼓動が、私に確信を与えてくれた』と言ったとしたら……。ああ、ヤクーブは私の言葉を聞いても、手を振り乱すこともなければ、髪を逆立てて、真っ青になって、神を冒涜することもない。ああ、あなたは嫉妬していない……!」


ヤクーブ:

「マダム……!」


ベランジェール:

「よく聞いて。私はあの人を愛していたわ。もし彼が望むなら、私の魂を否定してもいいくらい彼を愛していた……。留守中、彼が帰ってきたときに私がどれほど喜んだか……。悲鳴をあげたり、涙を流したり、恍惚としたり、笑ったり、私の興奮は昼も夜も続いた……。でも、ヤクーブはそれがわからない、あなたは嫉妬していないのだから!」


ヤクーブ、短剣を抜く:

「頼むから俺を殺してくれ、マダム! ……さもなくば黙ってくれ!」


ベランジェール:

「ああ! 天使が羨むほど幸せだった。それは愛の言葉で、永遠の交わりだった……。魂と情熱が生み出したものばかりよ!」


ヤクーブ:

「一方の俺は……。ああ、呪われている!」


ベランジェール:

「ここよ、ここ! まさに、この部屋よ……!」


ヤクーブ:

「アッラーよ! それが欲しいのか?」


ベランジェール:

「私はあの人を愛している。あれほど侮辱されたのに、彼からの愛の言葉があれば、今すぐにでも私の愛はよみがえる……。だから彼が生きている限り、私はヤクーブと一緒に行けないわ……。私は彼を愛しているの、聞いてる?」


ヤクーブ:

「やるのはいつ?」


ベランジェール:

「彼が生きている限り、私は復縁する可能性がある。彼が死ねば、私は全身全霊で二番目の男を愛するでしょう……。今、ヤクーブは、あいつは死ななければならない、すぐにでも死ななければならないと感じないの? もし、一時間でもためらったなら、私の心がどうなるかわかる? きっと私はあなたに『これでおしまいね!』と言うわ」


ヤクーブ:

「準備はできた……。命じてください!」


ベランジェール:

「あの人はこの部屋で倒れなければならない。このベッドに向かって歩いてくるとき、彼の足が墓にぶつかる……。彼は新しい花嫁を連れてこの部屋に戻ってくるのだから」


ヤクーブ、たじろぐ:

「そこで彼を……!」


伯爵が新妻を連れて前に出てくるのが見える。

二人の小姓が松明を持って先導している。

その周りで家臣と召使いが殺到している。


家臣と召使い、叫ぶ:

「我らが伯爵夫人、万歳!」


ベランジェール:

「地獄だわ……!」


家臣と召使い:

「伯爵万歳!」


ベランジェール:

「復讐は恥ずべきことだと思う? まだためらっている?」


ヤクーブ:

「いいえ」


ベランジェール:

「急いで急いで! 彼より先に行くには一瞬しかないから、よく見て! ……さあ行って! ああ、不幸だわ、何がヤクーブをためらわせるの? どうすればいいの? 準備はできていると言ったのに! 最後まで私をだますつもり? もう時間がないわ、これは天罰よ!」


ベランジェール、ヤクーブを押す。

ヤクーブ、部屋に入る。


ベランジェール:

「とうとう行ったわ……!」



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