第13話 お金を売ろう
「……まさか僕がギルドマスターになる日が来ようとは」
ギルドマスターダストとお馬鹿な冒険者達が追放され、僕とルードは冒険者ギルドの経営もしなければならなくなってしまった。
ただ幸いだったのは、ギルドマスターというのは僕にぴったりとハマっていたという事だ。
「マスター、買取頼みますよー」
「はいはい。えーとコカトリスの羽が金貨3枚。バジリスクの宝玉が金貨4枚。精霊の真核が金貨5枚にラプラスの迷宮の魔王の魂入りのクリスタルが金貨10枚だね……はいどうぞ、お疲れ様」
「ひえー、相変わらず手際がいいっすねマスター。 買取表も鑑定も通さないでこんなに早く……もしかして魔物の買取素材と買取価格丸暗記でもしてるんですか?」
「まぁ、ね。そんな難しいことじゃないから楽でいいよ。本物か偽物かも覚えてるから間違えることはないし、僕にぴったりの仕事さ」
「流石、最難関迷宮攻略者は違いますねぇ。俺も追いつけるように頑張らないとなぁ。それじゃあマスター」
「うん、またよろしくね〜」
渡された素材に対して、ルードに教えられた枚数のお金を渡すだけの仕事のはずなのに、冒険者のみんなは誰もかれも同じように驚いたり、時には尊敬されたりもした
正直何でなのかはここで一月ギルドマスターをやっているがさっぱりわからないが、まぁそんなこんなで僕はちゃんとした定職というものを手に入れた。
もちろん絵を描くことは続けているし、迷宮の版画も刷れば刷るほど飛ぶように売れ、僕たちはさらにお金持ちになったのだが、今度はあまりにも忙しい日々を過ごすようになった。
どれぐらい忙しいかと言うと、あまりにも忙しすぎて夢の中でも版画を刷り続けたほどだ。
「この前商店街で悪夢を見なくなる水晶玉っていうのが売ってたけど……買ってみようかな?」
ふと僕はそんなことを考えながらぺたぺたとキャンバスに筆を落としていると。
「よぅ、調子はどうだ相棒?」
ひょっこりとギルドにルードが顔を覗かせた。
「やぁルード、調子というとそれは絵の話? それともギルドの受付の仕事の話?」
「両方だ」
「あぁ両方ね。そうだね、絵の方はもう少しで完成するし、受付の方も問題なくできてるよ」
「そうか、そりゃよかった」
「うん、版画の作業はこの絵を仕上げたらやるつもり」
「助かるよ……悪いな、肉体労働だけお前に任せちまって」
申し訳なさそうにルードはそういうが、ルードは僕より何倍も忙しい。
ギルドの経営に加えて迷宮の地図の販売、商会ギルドの人との打ち合わせに、町中のギルドへの挨拶回り。
それらを全て平行で進めており、毎日ギルドハウスに戻るとクタクタになりながら泥のように眠っている。
それこそ悪夢すら見る余裕すらないほどだ。
「ううん気にしないで。それよりもルード、その手に持ってるのは?」
だというのに。
「あぁ、実はまた良いことを思いついてな?」
最近は、ルードがこのセリフを言うたびに、仕事もお金もどんどんと増えていった。
お金を稼ぐのが好きなのか……それとも、忙しいのが好きなのか。
……僕が思うに、きっと両方だろう。
「今度は何を売るの? 胡椒? それとも宝石?」
「いやいや、胡椒はまだ準備が足りねえからな……今度は金かねを売ろうと思う」
「……おかね?」
これを言い出した時は流石に僕もルードが疲労で壊れたかと心配した。
無理矢理にベッドに寝かせて医者まで呼んだほどだ。
だけど結局、例に漏れずこれも大成功だった。
例えば、冒険者達の集めた宝や資産を預かる「冒険者預金」をはじめ、万が一迷宮で怪我を負ったり死んでしまった場合に金銭的な補償を受けられる「冒険者保険」
その他にも色々とやったが、特に人気があったのは、経験が浅く武器や防具が揃えられない冒険者のために金貨や装備を貸してあげる「冒険者ローン」だろう。
冒険者保険に入っていれば、万が一死亡した時にはローンと相殺できるというサービスをルードは思いついたおかげで、保険とローンに加入する冒険者は後を経たず僕たちは大儲け。
冒険者達もこれのおかげで地図だけでなく装備もしっかり整えて迷宮に挑戦できるようになったため、結果、死亡・・したり怪我・・をする冒険者・・・は激減した。
「……ん? あれ? でもそうすると結局みんな、ローンの分の利息と保険の代金を払うだけになるような……」
………んー、まぁいいか。
とにかく、僕たちの生活は信じられないぐらい順調に進んでいくのであった。
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