第16話 自分の居場所

 子供と初めて手を繋いで帰ったあの日、家に帰ると風邪をひいていた下の子も元気になりそれに安心した妻もいて晩ごはんの支度をしていた。


 そこで俺がみた景色は暖かく温もりのある家族だった。

自然と俺も妻に

 

「俺に何かできることある?」

と聞く。


 妻も仕事を途中で抜けずっとバタバタだったから疲れているのが俺にもわかった。


 「ううん。大丈夫。あなたも疲れただろうから子供とゆっくりしてて。今日は迎えにいってくれてありがとね」

その言葉を聞き何か蘇ったような気がした。そのありがとうと言う言葉に。


そういえば今までもたくさん妻にありがとうと言われてきてたんじゃないか。

俺が妻を見てなかったんだ。


逃げてたんだ。


向きあおうとしなかったから妻の感謝の気持ちも頭に入ってこなかったんだ。


 日頃から感謝の気持ちは言われていたのに。   

 自分で勝手に自信がなくなってきて被害妄想に走って、居場所を自分自身で失っていたんだ。


 その一瞬だけでも妻と子供に向き合うと、そこには昔に見た温かい光が見えた。

今までその一瞬たりとも向き合おうとしなかった。

勝手に壁を作っていたのはこの俺だ。


 俺はここにいていいんだ。


 俺が作った場所。



下の子供も元気になりおもちゃで必死に遊んでる。

上の子はテレビでアニメを必死にみている。

 

なんて平和な家庭だ。


何も不満なんてないじゃないか。すごく幸せな家庭。


 身に染みてそれを感じながら久しぶりに皆で食卓に並んで妻が作ってくれた晩ごはんを食べた。

 

 ごめん。


 本当にごめん。


 俺は逃げてた。


 本当にごめん。


 心でずっと謝っていた。


でもなぜ、向き合う事を避けたのだろう。

初めは俺も向き合おうとしていたし、見ていたはず。


何度も何度も考えてみてもわからなかった。

 

 妻との喧嘩の続いた時期があったから?


 それでその時にたまたま俺の前に小春とゆう存在が現れたから?

 

 じゃあなんで俺は小春が好きなんだ?


またまた同じループに入ってしまった。


 晩ごはんを食べ終え子供とお風呂に入り、妻がお風呂に入ってる間、子供とくっつきながらゲームをして遊び、いつものように俺は皆におやすみっと声をかけ部屋に入った。


いつもの悩みのループを抑えようとスマホで動画でも見ようかと思い手に取る。


 すると今俺がスマホを手にとったことをどこかで見ていたかのように絶妙なタイミングで彼女からラインがきた。

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