第15話 天使の子と悪魔の大人

 あの切ない旅行も終わり、あの日は時間より早く家に帰り、上の子を保育園まで迎えに行った。


結局最後まで何を言っても「うん」しか言ってくれなかった彼女に、凹む自分もいたが、それよりも今は子供と妻の方に必死だった。

今まで保育園の送り迎えもできなかった俺。妻が私がするから。と言ったわけでもないのに、自分が迎えに行きたいと言い出せず、

気づけば自然とそれが当たり前のようになっていて何もできずにいた。


だからバレてなかった安心感もあったがそれよりも頼られたことに嬉しかったんだ。


保育園へ迎えに行き、子供たちが集まってる中から俺の子が必死でこっちに向かって走ってくる感じ。

たまらなく可愛い。


これは仕事疲れで、帰りに迎えにいってこれを見せられたらたまったもんじゃない。

やはり子供は宝だと思った。


子供の小さい手で俺の手をしっかりと握り、一緒に帰る幸せな時間。


今日お昼ご飯これ食べておいしかった。

○○くんと公園で遊んでそれで戦おうってなって戦って勝ったとか。

楽しそうに話してくれた。


きっと俺も小さい頃こんなんだったんだろう。

いつからそうゆうちょっとした当たり前の楽しいことから逃げ、叶わないものに向かって走っていこうとしたのか。


いや、逃げたんじゃない。いつの間にかどこかに落としていたのかもしれない。

落としたことに気づかず、気づけば自分になにも楽しいことがどこを探してもみつからなかったんだ。


一度落とした物。


いつどこで落とした?


小学校?中学校?高校?大学?社会人?


どの時もそれなりに楽しかったはずだ。高校の時初めてUFOキャッチャーで欲しかったものを取るため1万円ぐらい欲をだして使ったことがある。たしかにそれからお金使いが荒くなってしまった。


案外こうゆうことがきっかけで人って変わるのかもしれない。

俺は本当に色んなものを求めるようになった。初めはローリスクだったが今ではハイリスク。


それを求めてその先なにがある?

彼女を旦那さんから奪って二人で遠いところにいって結婚でもする?

いやいや。二人とも子供は大事だ。


じゃあなんで好きなんだ? 俺は彼女のことが好き。

でも妻、子供も好き。

それぞれのどこが好き?


愛し合いたいから?ただ彼女としたいだけ? いいや。したいだけじゃない。しなくてもただ二人で一緒にいたいだけ。

でも好きだからしたい。でも一緒にずっといれない。


単純そうで複雑。


人間は大人になるにつれてこんなにも複雑な考えになるのか?



 「ねえねえ。パパ。」

子供が俺の顔を覗き込む。


 「どうしたの?大丈夫?」

まだ三歳の子供にも俺の様子が分かったみたいだ。


 「早く帰って一緒にお風呂入って遊ぼう」

そう言ってくれた。


俺より子供の方がずっと大人だな。パパとして本当にごめん。でもありがとう。


そう心で思いその日初めて子供と二人で手をつないで家に帰った。

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