第8話 夢からの目覚め

 「もう終わりにしよう」

俺は震えながら彼女に伝えた。


 彼女は10秒ほど下を向きながら黙っていた。

 彼女はゆっくりと顔をあげ


 「何かあった?」

と震える俺を見て言った。


 「二人目の子供ができたんだ。だからもうこんな関係やめよう。ちゃんとしなくちゃ」

言いたくなかったことを覚悟を決めて口にした。


しばらく沈黙が続き、彼女の目から涙が溢れる。

 「ちゃんとしなくちゃって...」

 そうその言葉は重かった。

少なくとも俺たちは本当に愛しあっていた。好き同士一緒にいて当たり前なのに、ちゃんとするという概念がよくわからなくなっていたのだ。俺たちが自然と作り上げてきた夢の世界の中では。


 俺もそう言われて何も答えることができなかった。唯一言えた返事は、

 

 「ごめん...」

の一言しか言えることができなかった。


 その言葉を聞いた彼女は声を出して泣く。

本当は抱きしめたかった。

 歯痒い気持ちを胸にしまいこみ俺はもう一度ごめんと口にする。わかったよと彼女が口にするまで。


 

 話も終わり、彼女はまだ泣いていたが、俺は帰るね。の一言だけ残して彼女の車を降りた。


 これでよかったのだろうか。


 いいや。これでよかったんだ。


 けじめをつけないと駄目だったんだ。


 くそぅ。


そんな事を思いながら、俺は帰り道、これからの光よりも先程終わった夢のことばかり考えていた。


 

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