第2話 僕らってほんとバカ?

 僕らは白い光に包まれた。この白い光は、進化するときの輝きだ。

 前回の進化は、陸上での動きが遅く、敵である暗黒巨大生物に苦戦をしていた時だった。

 苦戦の原因である陸上での動きが遅いという欠点を解決するために、僕らは身体全体がスッキリして、水陸どちらでも動きが軽やかになるという進化を遂げた。


 しかし、今は特にピンチでもなく、平和な暮らしをしている中での進化だ。何も困ってはいない。一体どう進化するのだろうか。

 全く予想は出来ないが、より快適な身体へと進化するのだろう。よく分からないが楽しみだ。


「どんな進化をするんだろうね?」


 僕はワクワクしながら、ニノへ尋ねる。


「分かりませんね。何も困っていないのに不思議です」


 ニノは首を傾げながら返事をする。少し怪訝けげんな表情をしているが、僕は全く意に介さない。


「まあ進化が終わるのを期待して待つとしよう」


 白い光の中にいる僕らは、何かが出来るわけでもないので、そっと目を閉じて進化が終わるのを待つことにした。


 どのぐらいの時間が経ったのだろう。僕らは目覚めて白い光の中をモゾモゾと動き、壁を突き破って外に出た。


「どんな進化をしたんだろうね?」


 僕はニノへ話しかける。すると。


「んんん?」


 ニノがいぶかし気な表情をしている。なんだろう?


 ほどなく僕も気がついた。

 何だか身体がとても重い。一気に老け込んだかのようだ。


 僕は慌てて、ニノへ質問をする。


「これは一体どういうこと!?」

「不味いことになりました。パワー切れのようです」


 ニノがガックリと肩を落として、うなだれながら返答した。


「えっ、パワー切れ!?」

「はい。私たちは以前の進化から大量のパワーを使い過ぎたようです。パワーがマイナスになってしまいました」


 えっ、パワーの使い過ぎでマイナス!? 一体どういうことだ!?


 ここは、前回の進化の後に何があったか、少し落ち着いて振り返ってみるとしよう。


 いつ頃だったか前回の進化は、僕らが難敵の暗黒8本首に殺されかけた時のことだった。その時のパワーアップぶりは凄かった。僕らは進化によるパワーアップで、苦戦していた暗黒8本首に楽々と勝利を収め、さらには無数に生息していた暗黒オタマジャクシを一掃した。


 その後は、世界で双璧をなす最強国家の軍隊に囲まれて気疲れし、さらには世界最強と言われる巨大生物とも戦った。

 途中、モフモフ島やジャピア王国の温泉で、のんびり休養した気もするけれど、そこら辺にいる普通の巨大生物よりハードスケジュールだったことには間違いない。

 許容範囲を超えて、パワーを使い過ぎていると言えば、そんな気もする。


 思えば、人間の場合は脳を使うとカロリーを消費する。

 ということは、僕が第一の脳というだけで日頃から何らかのパワーを消費しすぎているのかもしれない。他の巨大生物より、元人類の僕の方が色々と考えていると思うしね。

 つまりこの現象を避けるには、僕がもっとぼーっとするのが正解だったということか。そんなバカな。


 それにしてもパワーを使い過ぎてマイナスとは一体なんだ!?

 よく意味が分からないけど、つまるところパワーの前借りでもした感じかな。


「それってパワーの前借りみたいな?」

「そんなところです」


 なるほど。パワーのご利用は計画的に、ということか。

 さらにニノはうなだれながら、小さな声で話しを続ける。


「最後のパワーをホタテ狩りに使ってしまいました。私がもっと落ち着いていれば、気がついたかもしれません。ごめんなさい」

「なっ、あのホタテ狩りで!」


 食いしん坊さんの影響がこんな形で現れるとは。しかし、ニノのせいとは思えない。僕もすっかり調子に乗っていた。


「いやいや、ニノのせいじゃないよ。僕も調子に乗っていたし」


 進化によって、より強く快適な身体になるのかと思ったら、まさか衰弱してしまうとは。

 しかし、こうなってしまったものは仕方ない。甘んじて受け入れよう。ニノと一緒に頑張るしかない。


 さて頑張るにしても状況の確認は必要だ。

 僕らはどれほど弱くなったのか。どんな姿になったのか。

 明るい海面まで浮上して確認をしてみよう。


「ちょっと浮上して姿を確認してみようか」

「はい。そうしましょう。何だか心配です」


 僕らは浮上しようと、身体に力を入れたのだけれど。


 あれれ、思ったより動き遅い! 思ったように身体が動かない!


 うん、これはもうダメかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る