第139話 魔導の深淵

【ナイトメア】


私達は蟻のボス部屋前にいた。


「この奥には蟻ダンジョンのボス、ジェネラルアントがいるのだけど、あなた達は部屋に入ってからは一切動かないでね。攻撃したり逃げたりしないで、動くとターゲットにされるから」


「わかったにゃ」


「そんなにボスは強いのか?」


赤髪の少年が聞いてくる。


この少年も潜在能力だけで言えば、化物クラスよね。


戦いに愛される純血。


だけど、この先は……銀猫みたいにならないと戦力外になるかもね。


「今のあなた達では倒せないし、怪我をさせる訳にはいかないわ。だから何もしないで」


「ああ、変な事はしねぇから大丈夫だよ」


「それなら良かったわ」


私はそれを聞き、ボス部屋に入る。


ボス部屋には、ボスのジェネラルアントと雑魚蟻が沢山いるけど、私からしたらボスも雑魚と変わらないわね。


普通にナイトメアソードで倒しても秒殺出来るけど……あの赤髪の少年に見せるのも良いわね。


私の最後なんだし、何かを残すのも悪くないわ。


「赤髪、ちゃんと見てなさいよ?」


「あっ?」


赤髪の少年はキョトンとしているが、見ているので問題は無いわね。


「あ、そう言えば……銀猫ちゃん、これをマスターに渡しておいてね」


銀猫にマスター宛の手紙を渡し、私は秘技によりボスを瞬殺した。


マスター……もっと一緒に居たかったですが、お別れですね。


次があればまた一緒に……





【レイ視点】


ここはどこだ?


僕は気が付くと、見知らぬ空間にいた。


見知らぬというか、未体験というか……虹色に輝く光が無限に続く空間で、地面も無くふわふわ無重力の様に浮いている感じがした。


全方位を見渡しても、景色は同じで虹色に輝く光がずっと続いていた。


あ、もしかして死んだ?


明らかに普通ではない空間。


記憶にあるのは蟻のダンジョンで囲まれていてピンチだったところまで……。


蟻に殺された確率が高いのかな。


しかし、この虹色の空間……なんだか落ち着くな。


目を閉じれば永遠に寝てられるんじゃないかと思えるほど、落ち着く。


まあ、どうせ死んだんだろう。


ならばちょっとのんびり寝るのも悪くないだろう……死んでも寝れるのかは知らないが。


僕は目を閉じ、無重力に身を任せる。


ふわふわ……。


ふわふわ……。


ふわふわ……?


あれ?


何か身体に力がみなぎってくる気がする……けど、死んだのなら気にする必要はないか。


ふわふわ……。


ふわふわ……。


『本当に魔導の深淵内で寝るの? お兄ちゃんは馬鹿なの? それともワザと?』


『……』


何か懐かしい声が聞こえる。


しかし、眠気が勝ったので無視してみた。


『え、なに? 私を無視? 意味分かんない!』


『……』


それにしても、誰の声だろう?


声の感じからすると10代の女の子かな?


しかもお兄ちゃんとか言ってたな。


僕の妹はフローラだけだし、声が全く違う。


『ちょっと本当に蹴るわよ!』


ドガッ!


僕は物凄い衝撃により目が覚めた。

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