第9話 魔導王の再臨

【次元の狭間】


「あれ……? レイならあっさりと【マナゲート】を使える様になると思ったのに……まさか【邪力】と【天力】をこんなに早く融合させちゃうなんて……」


「それはアナタの説明が悪かったからよ。もっと分かりやすく教えてあげれば良かったのに。禁忌に触れない限りは、今のレイなら忘れないわよ? あんな説明じゃ誰も分からないわよ」


「えっ!? 私的にはかなり的を得た説明だと思ったんだけど……それなら途中から教えてくれれば……ああ、駄目か。う〜ん、これからどうしますか? 封印してあった【魔導操作】のリミッターが外れちゃいましたから、きっと世界中に【魔導王】が再臨してるのがバレちゃったかな……」


「そうね。封印状態の魔導力なら一部の人のみだったけど、解放状態の本当の【魔導力】は距離に関係なく圧が伝わるから、ほとんどの者にバレたわね」


「龍妃、塔、金、虫、闘姫、闇師……私がレイのところに行けたなら、レイに危険を与える要素はみんな排除するのに……」


「まあ、私達がレイにできる事は助言するだけしかないわ」


「はい、分かっています」


「それじゃあ、レイをもう一度こっちに呼ぶわよ? だけど、レイの魂がこっちの空間に耐えられるとは言っても、今の状態だと次に呼べるのは1年後位だから……ちゃんと【マナゲート】のやり方や【魔導力】についての説明は出来る?」


「……ちょっと自信が無くなりました」


「ちょっと……アナタが頼りなのよ……とは言っても不安ね」


「「……」」




「そうだわ! 私が説明文を書くから、アナタがレイにそれを読んで伝えなさい」


「それは……アリなのですか? 禁忌に触れそうな気はしますが……」


「大丈夫よ。私から直接手紙を渡したら禁忌に触れるけど、アナタを経由して説明するだけなら問題は無いわ……でも、念の為に3分以内にしましょう」


「分かりました」




 ★


【バベル本部】


「……ああ、この虫唾の奔る波動は……遂に【魔導王】が再臨してしまったのですね」


 完治させた筈の1000年前に受けた胸の傷が痛みだす。


「くっ……ダリアン!」


 私は枢機卿のダリアンを呼ぶ。


「はっ、どうしましたか【バベル】様」


「聖戦です! すぐに聖戦の準備をしなさい!」


「せ、聖戦ですか?」


 ダリアンは戸惑う表情をする。


 そう言えば、1000年間聖戦なんて無かったわね……。


「そうよ、まずはバロン王国にガイアを送り、最近産まれた子供の中で黒髪の男の子をリストにさせなさい」


「分かりました。それで【バベル】様……聖戦とは?」


「聖戦とは邪悪な神の使徒である【魔導王】との戦争です。詳しくはヘパに聞きなさい……ヘパに話を聞きにいく時に聖戦は15年以内に開戦しますから、全ての神薬を消費してでも戦力を整えなさいと伝えて」


「分かりました」



 ★


【魔神祭壇】


「クックック……この波動は……我が友にして永遠の宿敵が再臨したな」


 しかし、感じられた【魔導力】は本当に一瞬だったから、【バロン王国】方面としか分からなかった……。


【魔導力】を解放した理由はなんだ?


 我に対しての挑発にしては一瞬で【魔導力】を隠す理由も分からない。


 やつの事だから、もしかしてうっかりか……?


 いや、そこまで馬鹿な事をする奴じゃない。



 これは……正確な理由が分かるまでは動かないのが得策か……?

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