第20話 サブチャンネル

 まさか星乃が俺のこと好きだったとか?


 いやそんなことない!


 星乃自身が失恋したか、なにかで気の迷いを生じさせてしまってるとかに違いないんだ。


「結月くんは美玖ばかり見てたから、私のことなんてちっとも見てくれなかったよね。でもいまは私だけを見るようにしてあげる」


 星乃はスーツはおろか、ブラウスのボタンまで外して俺に白い肌とピンクのブラジャーを見せつけてしまう。


「ま、待てって! 人がいるんだから……」

「結月くん、ここがどこだか分かってる? 秘密厳守の探偵事務所よ。顧客の情報は絶対に外に漏らさないわ」


 ふふっと余裕の笑みを浮かべた星乃は衝立の向こうにいる事務と調査をしている従業員に呼びかけていた。


「みんな、しばらく休憩を取ってきてくれるかしら? 同級生の彼と大事なお話があるの」


 たったそれだけで星乃の事務所の従業員たちは「了解です」とひとこと告げて、事務所をあとにしてしまう。


「これで事務所には私と結月くんしかいなくなった」


 よく気の利く従業員たちで事務所の照明を薄暗くしたうえにブラインドを調整して、雰囲気を演出してしまっていた。


 星乃の高ぶった感情は止まることを知らない。


 数年ぶりに再会した彼女は俺たちへの嫉妬心を赤裸々に口にする。


「私……結月くんと美玖がどんなえっちしてるのか想像しながら、ずっと慰めてたんだよ」


 星乃はかわいいおへそをなでたかかと思うと右手をスカートのウエストベルトへ手を差し入れてしまう。


「見せてあげるね」


 左手は胸元に寄せると星乃の息づかいは次第に早くなり始めていた。


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 星乃は俺の目に焼き付けるが如く、いたし終えてしまっていた。


「好きな人に見られて、するのって恥ずかしいけどくせになりそう……」


 かすれる声で好きな人って、はっきり言ってしまった星乃……。彼女がこんなにも、むっつりだったなんて知らなかった。


 俺の胸元に身体を委ね、ぷるぷると震えながら休みに入る。


 こんなことって。


 快活な美玖に対して、星乃は委員長タイプでクールに澄ましている印象が強かったのに……。


 俺の手もぷるぷると震えてしまっていた。


 このまま星乃を抱きしめようものなら、一線を越えてしまうのは確実で、綺麗になった星乃が学生時代にひた隠しにしていた“どすけべ“を俺に包み隠さずに見せてくれたことに懐かしい同級生という響きと相まって、興奮を抑えきれない。


 星乃はくるくると俺のシャツに指で円を描きながら、耳元で吐息混じりの声で誘惑してくる。


「私ばっかり気持ちよくなっちゃだめだよね。ねえ、二人で気持ちよくならない?」

「こ、こんなことはよくない……」


 星乃は生足になった膝小僧で股下をマッサージしながら、俺の耳を甘噛みしていた。


「美玖は結月くんを裏切ったんでしょう? だったら、いいじゃない。自分がかわいそうだと思わないの?」

 

 俺と美玖の関係を知る星乃は、はっきり言って俺の気持ちをわかってくれる理解者だった。そんな星乃は俺の顔に手を置き、彼女の目を見るように促してくる。


「ねえ、キスしよ。昔みたいにこっそりと……」


 えっ!?


 俺はなにも知らない!!!


 いまでこそ浮気してしまった美玖だが、俺は間違いなく彼女を愛していたし、隠れてこそこそと他の女の子とキスしたことはなかったはずだ。課長と姫野は……美玖と浮気してからのことだし。


「俺は星乃とキスしたことなんて、一度もないって!」


「うん……文化祭のあと、疲れて教室の隅で肩を寄せ合って眠るあなたたちに嫉妬して、こっそり結月くんにキスしたの。いけないことだって思えば、思うほど胸が高鳴ったわ。いまだにあのキスを越えるものはないの。美玖も浮気してるんだから、結月くんも浮気したって構わないじゃない」


 まったく気づかなかった。


 何年も前のことなのに、星乃にキスされたという唇に気づいたら無意識に指で触っている。


 星乃は俺が好きというより禁忌きんきに強い興奮を覚えているみたいだった。


 このまま流されてはいけないと思い、俺は美玖に一縷いちるの望みがあるかのようなことを口走っていた。


「まだ決まったわけじゃないから! もしかしたら、美玖はなにか俺に隠してるのかもしれないし……」


 自宅での行為はもうほとんど把握してるが!


「結月くんの気持ちはよーくわかったわ。だったら私が美玖が浮気している証拠を掴んで、あなたに見せてあげる。もし本当に美玖が結月くんを裏切っていたなら、あなたのこと私が癒やしてあげるから……」


 星乃って昔はすごく落ち着いていて普通に話せはするけど、どこか冷めているような印象だったんだが、いまはどうだ?


 俺に真正面から昔から抱いていたという恋慕を思いきりぶつけてくる。


 なら仕方ない。


 星乃の気持ちを美玖にぶつけてもらおうじゃないか!


 盛り上がった雰囲気から、冷めると星乃は恥ずかしそう後ろを向きながら、開け放たれたブラウスのボタンを留めていた。


 俺も身だしなみを整え、散らばったお金をかき集めて星乃に改めて頼んだ。


「これは元から星乃に払うつもりだったんだ。金額分だけ動かぬ証拠を集めてほしい。どんな小さなことでも構わない。足りなければ、俺がいくらでも出すから……」


「わかったわ。でも浮気の証拠が集まれば結月くんはそれだけツラい思いをすることになる……」

「かまわない。その覚悟はもうできてるから」


 星乃の想いには美玖と未練があるかのように思わせて断った。本当は星乃と……。


 だが俺は美玖と蓮とは違う。


 星乃に浮気が明らかになったときは、ちゃんとけじめをつけると告げて、彼女の事務所をあとにした。



――――浮気調査をお願いして、一週間後。


 俺はRTubeにてサブチャンネルを立ち上げていた。画面にはしぶみるい先生にキャラデザしてもらった萌え~! な女の子が手を振っている。


 漆黒のゴスロリ衣装に赤ちゃんがかぶっているような帽子ボンネットでピンク色の派手な髪を覆っているが、こめかみあたりで巻き髪のツインテールが生えていた。



 サブチャンネルのオリキャラ“地獄さたん“。



「地獄さたんですわ。こちらのチャンネルでは美玖ピー♪ピー♪の浮気の実態を暴いていきますわよ」


 黒い棒で目消しした蓮と美玖の写真と共にさたんが登場。


           《レンとミクだろwww》

           《目消し意味なしw》


 メインチャンネルの方は俺の部屋で勝手に浮気してる風景が映ってしまっているていだから、プライバシーに配慮していないが、サブチャンネルはモザイクやらピー♪といった自主規制音を入れなければならなかった。


           《四国めたん草》

           《浮気暴露ちゃんねるw》


「四国めたん? どなたですか、そちらの方は……」


 星乃の美玖に対する嫉妬はすさまじく、俺の下には二人の外での実態がすべてあぶり出されようとしていた。


 さすが業界で一目置かれる星乃だ。


 俺は若い男が玄関ドアの隙間でアラフォーと思しき女性とキスする写真を眺めていた。


 くっくっくっ、蓮が本当に枕営業してたなんてなぁ!!!


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楽しみしてくださっている読者さまにやきもきさせてしまい申し訳ありません。本日の10時前にカクヨム運営よりご連絡があり、修正を認めてもらい無事削除されることなく、連載を継続できる運びとなりました! イエーイ、ドンドンぱふぱふぅ♪ おっぱいもぱふはふぅ♪


これからも引き続き、皆さまのご声援にお応えできるよう頑張りますので、何卒フォロー、ご評価いただけるとありがたいです。

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