配信切り忘れたら、幼馴染彼女と後輩間男の浮気現場が垂れ流されていた。俺は寝取られを生配信して、10億儲けてやることを決意する
東夷
第1話 プロローグ
俺は、その日から人を信じるのを止めた。
信頼していた彼女の美玖と職場の後輩、蓮があろうことか俺の部屋で浮気していたのだから。
――――その日の早朝。
目を覚ますと俺の隣で眠っていた美玖の姿はない。隣からトントントンと何かを叩くリズミカルな音が響いてきていた。
俺より早く起きて、朝ご飯の仕度をしてくれているらしい。それにしてもいつもより早いのはなぜだろう、と思案していると思い出した。
そうか、今日は美玖は女友達と遊びに行く予定の日だったか。
すっかり彼女の予定を忘れていた。ここのところ残業続きで帰りも遅く、昨日も美玖が用意してくれていた夕飯を食べると彼女の寝ているベッドに起こさないよう忍び込む生活が続いている。
疲れは多少溜まっているものの、目が冴えて布団をかぶってもいっこうに眠くならず、二度寝することなく起きて、顔を洗うことにした。
「ふぁ~、美玖早いね」
「おっ、おはよう!? 隣太郎、もう起きたの?」
俺が部屋のドアを開けて、リビングダイニングに入るとエプロンをしたままスマホを握っていた美玖が俺の顔を見た途端焦って、スマホを落としそうになる。
まな板には切りかけのネギと包丁が乗っていた。
美玖は長い黒髪をシニヨンにまとめ、すっきりとした目鼻立ちの清楚系美人で甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる理想の彼女。
俺と彼女がつき合い出したのは高校二年の文化祭からだった。クラス男子の憧れだった彼女をダメ元で後夜祭に誘って告白したら、あっさりOKされてしまった。それ以来俺たちの仲は順調にすすみ、同棲するまでに至っている。
スマホをキッチンの上に置き、料理仕度を再開しようとする美玖に俺は言った。
「キッチンの上に置いたら濡れないか?」
「うん、大丈夫、大丈夫。ここにないとレシピとか見れないし」
美玖の身体が邪魔になり、スマホの画面ははっきり確認することができなかったが、最近美玖の料理の腕はいままで以上に上手くなり、旨い料理が食べられるなら、そんなことどうでも良かった。
「料理ができるまで時間がかかるから、隣太郎はゆっくりしてて」
「ああ、ありがとう」
鏡を見ながら、ひげを剃り、顔を洗い、歯を磨く。高校のころから、いつもやっていることだが美玖がキッチンで俺のために料理を作ってくれていると思うとしあわせな気分になる。
俺の親から孫の顔が見たいなんて一足飛びの催促が来ているが、まだ結婚するには足りないのだ。
資金的にはこれまで残業を頑張ってきた分、ある程度の目処はついた。問題はいつ買いに行くかだ。いまはゆっくりと見る時間がない。
せっかくなので早起きした時間を俺の趣味に当てさせてもらう。
俺の好きエアガンを配信で紹介していくというもの。
わずかばかりでも生活費の足しになればと思って始めたのだが、正直収益は芳しくない……。
扱っているものが大人のおもちゃだけに年齢制限つきのRTubeっていう動画配信サイトで流している。
俺のチャンネルなんて、ライブやっても10人も見にきてけれればよい方で5年もかかってこの前ようやく登録者数1000人を越え、ようやく収益化を達成したような底辺だ。
俺が女の子でかわいく且つ巨乳だったならタンクトップで谷間を強調すれば、イージーモードで10万人越えも夢じゃないのだが、現実は甘くはなかった。それでも数少ないリスナーと、チャットを介してとりとめのないやり取りするのが楽しい。
「おはようございます、ゆずみかんです」
俺がカメラに向かってあいさつするとチャットに文字が出る。
《おはよ》
《どもっす!》
名前を見るといつも見にきてくれるかつてのサバゲ仲間。カメラに向かって、手を振ったあと箱からお気に入りの一丁を掲げていた。
「じゃん! 今日のエアガンはICSから出てるHERA ARMS社のCQR!」
レシーバーはAR、M4系そのものだが、その特徴的なフォアグリップとストックの形状から近未来から現れたような銃器を思わせる。
《サイバーパンク感がたまらん!》
「ですよねー!」
《マガジンは自重で落下しますか?》
「ちょっと渋いので手で補助しないと無理かも」
今日の配信だと4人くらい見にきてくれた。
《仕事なんで抜けます》
《あっ、今日午前から講義だった》
「じゃあ、今日はこの辺で。面白かったら、いいね、チャンネル登録お願いします。まったね~!」
定期的に見にきてくれる二人が去って15分程度の配信を終えようとしていた。
「朝ご飯できたよ」
そのとき美玖から声がかかり、俺は慌ててYシャツに袖を通して出勤の準備を整える。
ほかほかのご飯にお味噌汁、おかずにはシャケを焼いた切り身に浅漬けきゅうりと白菜。決して豪華な食事とは言えないけども、美玖が作るとものすごく美味いんだ。
脂の乗ったシャケの切り身をご飯に乗せて、そのまま箸で掬って食うとシャケの脂と塩気、そして噛むと炊いた米の甘さが一体となって、至福となる。
俺が席に座り美玖の手料理に舌鼓を打っている一方で彼女はまだキッチンで作業していた。
「隣太郎、ごめんね。今晩は沙友理たちにお呼ばれしちゃってご飯を食べてくるの」
「ん? 気にすんなよ。俺に構わず遊んできてくれ」
事前に聞いていたことだし、いつも尽くしてくれる彼女の息抜きだ。俺はそれくらいでがみがみ言うような男じゃない。
「ありがとう、隣太郎」
このところ美玖の仕草が、なんだか妙に色っぽい。美玖はよほどうれしかったのか、椅子に座る俺をうしろから抱きしめて、ふーっと耳元でささやいたあと頬に口づけをしてきていた。
玄関で俺のスーツの上着を持ってきてくれ、着るのを手伝ってくれた美玖。仕事は楽じゃないが彼女のために頑張ろうと思い、俺はマンションをあとにした。
――――仕事終わり。
今日は上司の日向さんの機嫌がよく早く帰るよう促されていた。それなら好都合ということでオフィス街から少し離れた商業施設の建ち並ぶ駅で途中下車して、デパートへと向かう。
お店に入るとガラスケースのショーウィンドウにはまばゆい光を放つ宝石に、汚れひとつない真っ白なYシャツに黒のベストを着た女性店員が微笑みをたたえている。
かつてここを美玖と訪れたとき、じっと彼女が目を奪われていたダイヤモンドの指輪が売れていないことに俺は安堵した。だがそれと同時に身体が震えてしまう。
「この50万円のエンゲージリングをください!」
清水の舞台から飛び降りる覚悟で店員のお姉さんに震える声をかけていた。
軽の中古車しか持っていない俺にとってはいままで一番高い買い物だったが、俺に尽くしてくれる美玖に妥協はしたくはなかった。
店員のお姉さんは俺みたいな人を何人も見てきたのだろう、まったく動ずることなく微笑み「かしこまりました」と丁寧にお辞儀をして、サイズなどを間違いないか訊ねたあと包んでくれる。
会計となり、クレカの上限を越える金額なので銀行で下ろした現金をお姉さんに手渡した。現金と交換に、てかてかとラミネートされた高級感あふれる紙袋を渡された。
あとは美玖にどう手渡すか、だった。
やっぱりこういうのはサプライズで渡すのがいちばん良いだろう。
さっと俺の周りから人が後ずさりする。
美玖が俺からエンゲージリングを受け取りよろこぶ姿を想像し、にやついているとまだ通勤客の多い電車内で彼らから引かれてしまっていた。
こればっかりは仕方ない。
よろこんでもらえるかどきどきしながら、家路についた。美玖から告げられていた通り、彼女の姿は部屋の中にない。
寂しい想いを紛らわそうと冷蔵庫を開けると彼女の作った夕飯にラップがかけられ、メモが貼ってある。
【隣太郎、お仕事お疲れさま!】
彼女のひとことがじんわり身に染みて、疲れも吹き飛びそうになった。「ごちそうさま」と美玖の作ってくれた豚カツを食べ終え、お皿を食洗機に突っ込む。
20時か……。
ふと時計に目をやると、いつもならまだ仕事をしている時間だった。手持ち無沙汰で部屋に入ったときに気づく。
しまった!
すっかり暗くなった部屋に入るとカメラのランプが点灯しっぱなし。俺は朝、美玖から声をかけられ、うっかり配信を切り忘れていた。
見るとどうやら、アーカイブにその後の動画が残っていたため、確認することにしたのだが……。
なんだよこれ!?
それは俺の部屋に美玖と蓮が入ってくる様子が収められてはいた。二人は親密そうに肩を寄せ合い、いや蓮が美玖の耳に吐息を吹きかけると彼女がぶるぶると身体を震わせている。
「ダメったら……蓮くん」
「先輩の部屋でヤるとか、めちゃくちゃ燃えね?」
「そんなことないからね」
「マジ? 美玖のここ湿っぽくね?」
「興奮してるのかも……」
蓮は美玖のスカートの辺りを撫で始めているのに、いやがるどころか頬を赤らめて、まんざらでもなさそうに見えた。
や、止めろ!
蓮! なに人の彼女に手を出してるんだよ!
美玖! いやならちゃんと断れよ!
俺の願いも虚しく、二人は行為をエスカレートさせていくのだった。
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親愛なる読者諸君、ねっとりとしたネトラレが読みたいかな? ならばフォロー、評価を心よりお願いしたい。作者は諸君らの応援に期待する!
※偉そうにごめんなさい、メガニケのギロチンが面白くて、厨二病をこじらせてみました。
■おしらせ
作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。
【乙女ゲーのざまぁされる馬鹿王子に転生したので、死亡フラグ回避のため脳筋に生きようと思う。婚約破棄令嬢と欲しがり妹がヤンデレるとか聞いてねえ!】
異世界ファンタジーざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!
表紙リンク↓
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