そばにいて。

だずん

第1話 出逢い

 夜の布団の中。


 誰もいない。


 ううん、あなたがいる。


 私ひとりじゃ思い出すのは怖くてできないけど、あなたと一緒になら思い出せるはず。あなたがどんな人かはわからないけど。


 でもね、聞いてくれる人がいるって全然違うんだ。

 ひとりじゃないって思えたら楽になるから。

 うまく思い出せないんだけど、ちょっとずつ思い出さなきゃって思ってるからね、だから見守ってくれると嬉しいな。




 まずは思歩しほと出逢った時のことを思い出してみるね。

 思歩と出逢ったのは去年の4月だから、高校3年生のクラス替えの時だっけ。うん、ちょっと思い出してきた。あの時は楽しかった気がする。何か喋ってたような……。確か……。


 初めて3年1組の教室に入った時のことだったかな。

 隣の席の子が思歩だった。


「こんにちはー!」


 最初のあいさつは元気だなーって印象だった。

 どんな顔だったっけ……?

 笑顔だったと思うけど、顔が出てこない……。


「こんにちは」

「私は思歩って言います! あなたは?」

由未ゆみだよ」

「由未ちゃんって言うんだ! これからよろしくね!」

「うん!」


 そうそう。つられて元気に返事をしたんだった。

 普段はそれほど元気してないんだけど。

 あの時から色々と変わった気がするなー。


 あ、段々顔が思い浮かんできた。


 うっ。苦しい……。思い出しちゃうと苦しい。

 胸が詰まる。涙が出ちゃう。


 ひぐっ。うぐっ。うわーん……。はっ、はっ、はー。

 ううん、泣いちゃだめ。今はあなたがいるんだよね。 


 ちょっと待ってね。泣き止むまで待ってて。








  ぐすん。








      ひぐっ。







 うん、もう大丈夫。

 ごめんね取り乱しちゃって。

 何でこうなったかちゃんと説明しなきゃね。


 私ね、思歩との思い出をたくさん封印しちゃったみたいでね。

 思い出したくない! って思ったことだけはよく覚えてるんだけど、ほんとに思い出したくないって思った内容が思い出せないんだよね。

 だから、きっと私はひどく苦しい気持ちになったんだと思う。

 その時には耐えられないくらいに。


 でも今は少し時間が経って、心の中で渦巻いているひどい感情を消化していかなきゃって思ってるの。ただ、やっぱりひとりだと不安だから、あなたが一緒にいてくれると嬉しいな。あ、あなたを怖がらせるつもりは無いからね。


 ただ、ちょっとだけ愛が欲しいの。

 お話聞いてくれるだけで嬉しい。

 でも、よかったら一緒に考えてくれるともっと嬉しいな。


 今日は馴れ初めのお話だったよね。

 あなたも誰かと初めて出会った時のことって覚えてるかな?

 恋人でも友人でもいいよ。大切だと思う人でも、仲良くしてて楽しいなって思う人でも。


 覚えてたらそれはすごく印象に残ってるってことだから、素敵なことだよね。覚えてなくてもそれって物心つく前から知ってる人なのかもしれないし、後からすごく仲良くなったのかもしれないからそれもまた素敵だよ。


 とにかく私の場合は覚えてたの。印象に残ったの。

 だからこうやって思い出を封印した後でもすぐ思い出せたのかも。


 ほんと思歩は元気でかわいかったんだよ!

 私とすごく仲良くしてくれて……。どう仲良くしてくれたんだっけ……。なんだっけ。毎日一緒に帰ってた、うん。それでいつもお喋りしててね……。


 うぅ……。うぐ……。ひくっ……。

 ごめんね。また泣いちゃった……。

 でもあなたがいるから大丈夫。

 うん。収まった。


 とにかく思歩との出逢いはそんな感じだったの。

 ちゃんとこのことを思い出しても泣かないように、感情を消化しないとだね。


 どうして消化しないとだめなのかはイマイチよくわかんないけど、でもこのままだと過去に囚われたままな気がするの。


 私ね、幸せになりたいんだ。

 だからね、私はちゃんと私と向き合うの。


 今日はありがとね。

 お話聞いてくれたから、よく眠れそう。


 また明日も来てくれると嬉しいな。


 おやすみなさい。




 ☆


 もし応援コメントを書いてくれる優しい人がいたら、私(由未)が答えるよ!

 今日話題に出した、誰かと初めて出会った時のお話でも、感想でもなんでも大丈夫だよ!

 あなたの感情、大切にするよ。

(作者にコメントしたい時は「作者さんへ」みたいに書いてくれたらいいよ!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る