初めての異世界人

第17話 初めての異世界人

いつものように俺達二人と二匹は街道を移動し新たな狩り場探しに出掛けていた。

とりあえず東西南北があるのか知らないけど、まぁ自宅から見て右と左。

この森もやたらと大きな森みたいで、左側を四時間程ラスターに引かれながらキャリーカートにゆられ移動したけど、結局森を出る事は出来なかった。


途中で遭遇した魔獣はゴブリンとオーク以外にコボルトや黒いオオカミが新たに登場しコボルトはウインクとサクラが二人でサクッと倒してしまい、黒いオオカミはラスターが威嚇するとすぐに姿を消した。

たぶんラスターよりも弱いのだと思う。


ラスターもウインクも黒系のオオカミだと思うけど種類が違うのかな?


あとイノシシとサイが混ざったかのようなイノシシサイ?と遭遇した。

毛むくじゃらな体に大きなツノが生えていて、体の大きさは高さ2Mを簡単に越える巨体だ。


自動車のワンボックスカーよりデカイ。


現れる時は1体~2体なのでこいつらも余裕で倒せるかなと思ったのだけど。


「お兄ちゃん!あのイノシシサイ、一発じゃ死なないよ!」

突進してくるイノシシサイをサクラに狙撃してもらったけど弾丸は頭を貫通して胴体すらも貫通しているのに突進が止まらない。


「ヤバイかな?死なないの?」


最後は俺が火炎放射するか、ラスター・ウインクに任せれば大丈夫だと思っていたのだけど、あせったサクラはイノシシサイをフルオートで蜂の巣にする事でイノシシサイの突進が止まりパタリと倒れてアイテム化する。


「ここまで来ると魔獣も頑丈なんだな」

「今までのゴブリンやオークは一発で倒せたからね、ちょっと残弾とかも心配になるよ」


ドロップするのは黄土色をした輝きの無い石。

しかもかなり大きい。ノーマルゴブリンが親指大くらいの石を落とすのに、イノシシサイはサッカーボール位の大きさの石をドロップした。


体の大きさもあると思うけど、この石は強さによって輝きや大きさが異なるみたい。

エンペラーゴブリンの時は大きな石をドロップしたしね


その後、イノシシサイに遭遇する事が増えたのでサクラが残弾を気にする事もあり左側の道の探索はいったん切り上げる事にした。



そんなわけで今日は右側を進む。

俺とサクラはキャリーカートに乗ってラスターがカートを引っ張ってくれる。

ウインクは索敵をしているのかカートの周りを行ったり来たり。


街道では今まで人に会った事が無いので誰が整備しているのか知らないけれど徒歩で移動する山道や林道ではなく、馬車でも通れそうな未舗装の整備した道なのが謎。


人が使わなければ魔獣やゴブリン等の人型モンスターが常時整備している道なのかと疑問にすら思い、不思議な道だ。



街道?をしばらく進んでいくとウインクが何かに気が付いたようで移動を停止したので、いつでも戦闘態勢に入れるようにラスターの引きひもを解除して解放してやると、ラスターは一定の方向を見つめ様子を伺っていた。


「ラスター何かあるのか?」

『ウォン』


肯定の返事なのでラスターの警戒する様子を見てキャリーカートにカムフラージュ用のシートを被せると、俺とサクラも茂みに身を隠す。


街道は一本道だと思うので何かが来れば目の前を通るかもしれないけど、キャリーカートに気づかれて不審に思われるかなとか思いつつ、俺達は茂みで息を殺す。


やがて高貴な馬車が近づいてきたが、少し手前で止まると御者と思われる男達が馬車から馬を外しながら会話しているのが聞こえてくる


「ここが地獄の3丁目って所だな、こんな所からはとっととオサラバしたいぜ」

「後妻さんもわざわざ面倒な事させるよな、女なんかスラムにでも放り込んで襲わせりゃそれで終わりだろに、ゴブリンかオークの居る所に置いて来いなんて指定しやがって!」

「眠っている姫さんも運が良ければ1~2日後に捜索隊が入って救出されると思うけどな、その頃にはゴブリンかオークの子供でも孕まされているんじゃねぇの」


「殺すよりも酷い事をしろってひでぇ義母も居るものだな」


「あの後妻からしたら本妻のお姫様より自分の娘の方が可愛いのだろう、お姫様がモンスターの子供なんか孕んだら、後継者候補からも外れるから、それも狙いだろ」


「女は怖いね、俺なら殺す方を選ぶよ、あー怖い怖い」


「あの後妻からすれば、姫さんに生きて帰って貰わないといけない都合があるんだろうよ」


会話が終ると男達は馬車をそのままにして馬に乗りその場から去ってしまった。



「ラスター他に人や魔獣の気配は無いか?」

『ウォン』

同じような返答だけど、否定の時は首を横に振るので今は肯定の返事だ。


捨てられた馬車に近づき恐る恐るドアの窓から中を覗くと、中に居たのはメイドさんと思われる少女と中世のお姫様と思われるコルセットでウエスト周りをぎっちり締め上げられ、胸元を凄く強調したピンク色のドレスに身を包んだ縦髪ロールの茶髪美少女が眠っていた。


多分サクラと同年齢位かな…


状況的に俺が声を掛けるよりも同性のサクラが声を掛けた方が良さそうな感じもするので異世界人とのファーストコンタクトはサクラにお願いしよう。


「お兄ちゃん、私は外国語なんか話せないよ!言葉通じなかったらどうするの!」

「大丈夫だと思うぞ、さっきの男達の会話が日本語だったじゃないか」

「そう言われるとそうだったね…不思議、私も日本語で聞こえていたよ!」

「大丈夫だ!貴重な異世界人とのファーストコンタクトはサクラに任せた!」

「了解!!」


こんな時に無駄に明るいサクラの性格は助かる。

聞こえるのと話すのはどうなるのか知らんけど。


ラスターとウインクには茂みで待機して周囲の警戒を続けて貰うことにし、サクラが馬車のドアを叩き中の二人にファーストコンタクトを試みる


ーガンガンガンー


「大丈夫ですか!こんな所に馬車を止めてあると危ないですよ!」


音に気が付き最初に目を覚ましたのはメイド姿の少女

「あなたは何なのです!この馬車はマーキュリー伯爵家の馬車と知っての行いですか!」

「いきなり怒らないで!森の中に馬車が放置されていたから声をかけたのよ!」


状況が飲み込めていないメイド少女はそのまま考えるように言葉が詰まってしまう


「あれ、言葉がやっぱり通じなかったかな?」

「あなた今、森の中に馬車が放置されていると言いましたね?」


「良かった!言葉が通じるんだね!」

サクラは俺の方を見て、俺もサクラの話が彼女達に通じている事が判った。

何だか解らないけどとりあえず日本語が通じるようだ。


「あっ、ごめん、馬車を運んできた人が馬車を置いて帰っちゃったよ」

この言葉を聞いてメイドの少女が隣のお姫様を必死に揺すり起こしていた。


お姫様が目を覚ます

「あの、私は一体何をされたのでしょうか? ここは何処なのでしょうか?」

一緒に居たメイドの少女が色々と説明をすると、お姫様の様子が変わり青ざめていく。


少し時間をおき落ち着いた頃に二人の少女は馬車を降りて俺達の前に出てきたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る