第2話 街なかでお姫様と四銃士の御一行を見かけました。

 猫耳に尻尾なんて、なんてあたし得。

 メイドちゃん達がたまに猫耳や尻尾つけてるのが、かわいくて。

 一度つけてみたかったのよねぇ。


 せっかく異世界に来たんだし、まずは探索してみよう。

 街の外はモンスターとか出そうで怖いので、街の中限定で!


 木製の建物。

 レンガ製の建物。

 武器屋に道具屋。

 本当に異世界だ。


 街の中心を見ると大きなお城がある。


 お城には本物のメイドさん居るのかなぁ?

 王様に王子様も居るのかなぁ?

 う~ん。夢が広がるわ。


「道をあけよ!」


 突然、甲冑の兵士達が数名出てくると人々を道のハシへと追いやった。

 隊列を組んだ甲冑の兵士。

 その後ろに続く馬車や騎馬隊。

 人々のあけた道の真ん中を堂々と進む。


 まるでこれから有名人のパレードでも始まるみたい。

 ひときわ目立つ金色の馬車がこちらへ向かって来た。

 

「うわぁぁ。王家の馬車? 王様が乗ってるのかな?」


 金色の馬車の窓を見ると黒いゴスロリ風ドレスのお姫様がこちらに顔を向けた。

 まわりの人々が噂している。

 ヴァレンシュタイン家お姫様マリー様らしい。


「うわぁぁ。本物のお姫様だ。今、目があった!」


 思わず手をふった。


 え? なんだがプイッと目をそらされた?

 そうよね。

 あたしみたいな庶民。

 しかも猫耳と尻尾つきなんて、お目汚しも甚だしいわよね……。


 金の馬車が通りすぎると後には騎馬隊が続いた。

 先頭の4人の騎士は、甲冑をかぶっていない。

 全員美しい顔立ちで、ひときわ目立っている。

 

「キャアアアアア! ジャン様!」

「アンリ様! こちらを向いて!」

「ジャックさま! ジャックさま! ジャックさま!」

「ルネ様! 好きよ!」


 あたりからまるでトップアイドルを迎えるファンのような声が飛び交う。

 あたしも、思わず、ぼんやりと眺めてしまった。


「お嬢さん。見ない顔だね」

「は、はい。この街に初めて来たもので」


 隣に居た男性に話かけられた。

 背は高くスラっとしていて黒いスーツの似合う執事様?

 スーツはちょっとヨレていて、すこしばかりナヨっとしてる。

 ちょっと頼り無さそうな母性本能くすぐるタイプってやつなのかなぁ。

 

「すごい人気ですね」

「ああ、『ヴァレンシュタイン家直属近衛兵団四銃士』様だ。

 俺なんかと違って強くて、カッコよくて、名誉もある。

 そして、4人ともお姫様の花婿候補らしいよ」


 すごい! 四銃士なんて思わずトキメイてしまう。

 あたしなんて一生相手にされないだろうけど、こんなに近くで見ることが出来て幸せ。


「あ、ご挨拶遅れました。あたしはマミです」

「え? マリー?」

「いえ、マミです」

「へー変わった名前だね。

 俺はアゼル。

 よろしく!

 そこの冒険者酒場のマスターさ」


 アゼルが親指でカッコつけて指さす先には、なんだかちょっとオンボロな小屋がありました。

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