第33話 直接対決

「師匠! ハンターズが秋葉原に現れました!」


 スマホをチェックしていたマリナが声を上げた。


 それを聞いて、AXXYのメンバーが歓声を上げる。


「死ぬ死ぬマン! もう終わりよ! ハンターズがあなた達を叩きのめすわ!」


 威勢は良いが、硬いロープで縛られ動けない。芋虫のように地面を転がりながら強がる。滑稽だ。


「ほーん。三時間経過してやっと助けに来たのねー。ほーん。本当に彼女のことが大事なら三十分以内に来ると思うけど」


 ギッと睨まれた。憎まれ役も楽じゃないぜ。


「視聴者の皆さん! もうすぐここへハンターズの三人がやって来るようです! 死ぬ死ぬマンチャンネルとしては、犠牲者を最小限に食い止めるため、リーダー同士のタイマンを提案したいと思います!!」


 どうせ見てるんだろ? 死ぬ死ぬマンチャンネルを。


「どう思いますか……!? 視聴者の皆さん!!」


 コメント欄をチェックすると勢いよく文字が流れていた。



『タイマンとか絶対負けないじゃん!!』

『タイマンとか、卑怯者じゃん』

『死ぬ死ぬマンはさぁ、本当に狡いよね』

『神野さんは負けないから!』

『モブ顔の癖に調子にのるなよ!』

『タイマンで卑怯者よばわりは草』

『もっと煽って!!』

『ハンターズ、見てる〜!?』

『タケシちゃん! 頑張って!!』



 アンチも混ざって来たな。しかし俺にとって視聴者は全員味方だ。等しくHP。あざます!


「ハンターズ、ダンジョンに入りました!」


 マリナの声で、周囲に緊張が走った。誰もが黙り込む。


 ジリジリとした時間が流れ、やがて足音が響く。


 やって来た。奴等だ。


 スタッフを引き連れ、ハンターズは現れた。



「死ぬ死ぬマン! 人質とは卑怯だぞ! 貴様に人間の心はないのか!!」


 開口一番、笑わせてくれるじゃないか、神野……!


「随分遅かったな! 貴様には人質を大事に思う心はないのか!!」


「……地方に行ってたんだ……。すまなかったミク」


 神野は地面に転がるAXXYのリーダーに声を掛けた。ミクって名前だったんだ。知らなかった。


「嘘くせ〜。どうせ事務所で対策を練ってたんだろ? 死ぬ死ぬマンを倒すにはどうすればいいかって!」


「お前如き、俺の敵ではない!」


「オッケーオッケー。その意気だ。神野。ここは、リーダー同士でタイマンといこうぜ!」


「……後悔するなよ……」


 神野が一歩、二歩と前に出た。こちらを睨みながら、ゆっくりと剣を抜く。


 青白く輝く剣身。ご自慢の魔剣だ。


 見惚れていると、いつの間にか間合いが近い。


 カチンッ!! と音が響き、HPの壁が刃を弾いた。


「フンッ! 破ッ!!」


 斬撃が次々と繰り出され、HPを削る。しかし──。


※【 H P 】 156215/158324


 ──全く問題ない。


 過去最高の同時接続数。過去最高の投げ銭。何も恐れるものはない。


「オラッ!!」


 HPの壁で無理矢理押し込み、金属バットを足元に振う。

 手応えアリ。


 鈍い音と一緒に、神野は地面に転んだ。


「ごめんなさいって言えば許してやるけど?」


 金属バットを大上段に構える。


「……誰が貴様なんかに……」


 神野の顔が歪む。


「ならば逝け──」


「馬鹿め!!」


 神野が懐から何かを取り出した瞬間……俺の身体は動かなくなった。

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