第4話 コメント殺到
『うおおおお!! 死んでない!!』
『何が起こったの!?!?!?』
『全然ゴアじゃない……』
『モブじゃなかったの? 死ぬ死ぬマン』
『どうなってるの!? 死ぬ死ぬマン??』
『えっ、さっきのなに? バリア?』
『やるじゃん! 死ぬ死ぬマン!!』
『絶対死ぬかと思って目をつむっちゃった!』
『よく分からないけど凄い! 死ぬ死ぬマンさん!!』
『HPがあるうちは無傷ってこと?』
『……』
チャンネルにコメントが殺到していた。これはアピールチャンス。
「そうなんです! 俺の身体は呪いのスキルによってロープレ的な法則に支配されているのです! HPがあるうちは無傷ですけど、一桁になると身体が重くなり、ゼロになると死にます!! ちなみにHPの上限は視聴者の数です!!」
これは脳内ステータスのスキル【配信命】に記載されていたことだ。間違いない。
『視聴者が増えれば無敵じゃん!』
『視聴者が減れば最弱……』
『一人でデスゲームしてて草』
『視聴者に生殺与奪握られてる男wwww』
『皆、見るのやめようぜ!!』
「ちょっと! 本当にお願いします! チャンネルはそのまま──」
バシャッ!!
血飛沫が上がる。
バシァッ!!
冷たい液体が降ってきた。
バシャァァッ!!!!
肉片まで飛んできた。
瞳を真っ赤に染めたマリナが巨大な斧を振い、次々とグールを屠ったのだ。いとも簡単に。
微かに知性があるのか……。仲間の消滅に一体残った女型のグールが怯えている。
これは……絵的に美味しいな。
俺は立ち上がり、女グールを庇うポジションに移動した。きっとコメント欄は沸き立っていることだろう。
「なんのつもり……!?」
「脳筋斧ガールより、女グールの方が可愛いからね!」
ドンッ! と気が炸裂した。
マリナの服が飛び散り、赤く焼けた裸体で斧を担ぐ。
「うわぁぁぁ!! 露出狂だぁぁぁ!!」
「シネェェ!!」
言葉と同時に重たい鉄塊が振り下ろされる。が──。
──カキン!! それは弾かれる。
今の視聴者数は1000を超えているだろう。
スパチャも来ている。まさか……投げ銭でHPが回復するとは知らなかった。【配信命】のスキルはやばい。
ステータスを確認すると、見たことない数字が並んでいた。
※【 H P 】 1053/1232
全能感が俺の身体を支配した。今ならやれる。マリナを殴れる。
斧の旋風が襲い掛かってくるが、それは全て虚しい。
カキンカキンと軽い音に弾かれ、狂った女の瞳に焦りが見えた。
「ほーん。大したことないなぁ。ゴア系アイドル配信者も──」
ギッ! と鈍い音が金属バットから鳴る。それは斧と拮抗していた。
背中に女グールの気配を感じる。俺を頼るような。
「もう一丁ぅぅぅうう!!」
今度は脇腹に決まった。二人のスタッフが慌てふためく。
「ダンジョンは無法地帯だから! なっ!! いくぞ!!」
冷たい手を取り、俺は女グールと走る。走り去る。
意外なほど簡単に離脱できた。追手はない……。
夢中で進んでいると、秋葉原ダンジョンの入り口近くに来ていた。
「はぁ〜、大丈夫か……?」
「ウゥウゥア」
大丈夫と、言った気がした。
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