誰も助からないなら、みんなで地獄めぐりしませんか...
Heater
第1話 戦禍
外から足音が聞こえる。
規則的な大勢の足音。その足の主たちはあらゆる方法でこの家が「戦争犯罪者」の家だと知って、正義を胸にやってきた。
実際には俺は戦争中に盗まれた身分証を取り返しただけなのだが。
ドアが蹴破られ、押し合いながら男たちが土足で上がり込んだ。
うちは廊下まで土足なのだが、玄関には泥落としのマットを敷いている。
男たちの一人が俺の名であり、またかつての戦友であった人物の名を吠えた。
「ワイパー」
俺ははい、と言った。こいつら俺を殺しに来たんじゃないのか?
「ワイパーを返せ!」
「もともと、ワイパー・トラックの身分証は俺のものだ。あんたたちの同僚が俺から奪った。」
「嘘だ」一緒に上がり込んだ者たちが口々に叫ぶ。嘘だ嘘をついてる!
残念ながら、何人で来ようとも俺がワイパーで、兵士が嘘をついていたという事実は変わらない。
俺は機転を効かせて、その兵士の取り分の要求はしないことを表明した。
が、突然外で閃光が光り、家の壁はメラメラ燃えた。
気体とは思えない煙がもうもうと立ち込める。
俺の前にきて直接話をしていた人物は、燃え輝きながら口を開いている。
彼の体は徐々に形を失っていき、輝く粘土のようになって煙の中佇んでいた。
外へ出て逃げよう、と言ったが被弾の時に耳がイカれたようだ。俺は手振りで無傷な兵士たちについてくるよう示して外へ駆けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます