誰も助からないなら、みんなで地獄めぐりしませんか...

Heater

第1話 戦禍

外から足音が聞こえる。

規則的な大勢の足音。その足の主たちはあらゆる方法でこの家が「戦争犯罪者」の家だと知って、正義を胸にやってきた。

実際には俺は戦争中に盗まれた身分証を取り返しただけなのだが。


ドアが蹴破られ、押し合いながら男たちが土足で上がり込んだ。

うちは廊下まで土足なのだが、玄関には泥落としのマットを敷いている。

男たちの一人が俺の名であり、またかつての戦友であった人物の名を吠えた。

「ワイパー」

俺ははい、と言った。こいつら俺を殺しに来たんじゃないのか?

「ワイパーを返せ!」

「もともと、ワイパー・トラックの身分証は俺のものだ。あんたたちの同僚が俺から奪った。」

「嘘だ」一緒に上がり込んだ者たちが口々に叫ぶ。嘘だ嘘をついてる!

残念ながら、何人で来ようとも俺がワイパーで、兵士が嘘をついていたという事実は変わらない。

俺は機転を効かせて、その兵士の取り分の要求はしないことを表明した。

が、突然外で閃光が光り、家の壁はメラメラ燃えた。

気体とは思えない煙がもうもうと立ち込める。

俺の前にきて直接話をしていた人物は、燃え輝きながら口を開いている。

彼の体は徐々に形を失っていき、輝く粘土のようになって煙の中佇んでいた。


外へ出て逃げよう、と言ったが被弾の時に耳がイカれたようだ。俺は手振りで無傷な兵士たちについてくるよう示して外へ駆けた。


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