このユビ動け!

鳩原

第1話カレラを語れ!

 僕のクラスには四天王がいる。といっても、僕が勝手に心の中で呼んでいるだけなのだが。今日はせっかくだから四天王たちの紹介をしていきたい。

 まず、僕が彼らを四天王と呼ぶ理由について。一つ目に、この教室の席順がある。うちの教室はぴったり六列×五人で三十席あるのだが、彼らの席はその四隅なのだ。ちなみに僕は三列目の三番目なので、何だか守られている感じがする。そして二つ目に、強いこと。四天王に強さは不可欠。彼らには誰にも真似できないような能力がある。

 それぞれの能力はおいおい紹介するとして、次は名前とか外見とか。まず一人目。葉鈴毬はれいまり。窓際の席の一番前に、彼女はいる。女子にしては、なかなか身長が高い。165センチくらいか。いつも背筋をピンと伸ばして、切れ長の目を見開いて、熱心に授業を聞いている。歯に衣着せぬ物言いで一部の男子たちからは恐れられている、ザ・学級委員長タイプだ。ちなみに部活が忙しいとかで実際は違う。

 二人目は窓際の一番後ろ。背は僕と同じくらい、つまり普通。おっとりとした喋り方で、柔和な雰囲気を醸し出している彼の名前は、伊尾割礼太いおわりれいた。こっちは細いたれ目をもっと細くしながら授業中たまに船をこいでいる。そして葉鈴さんに怒られている。

 三人目の廊下側、最前列には、陸戸陽菜りくとひな。いつもメガネを掛けていて、背は結構低い。授業態度は可もなく不可もなくという感じ。ただ、性格は、控えめというか、消極的というか……。僕はなんとなく頼まれたことを断れないタイプじゃないかと心配していたけれど、嫌なことははっきり拒否できる人だった。学級委員決めで揉めた時はちゃんと発言していて、僕は勝手に安心していた。

 四人目の廊下側の一番後ろには、痩せた男子が座っている。名前は近布田慧真ちかふだけいま。背は高いけれど、体重は僕よりもないんじゃないかと思う。いつも目の下にクマがかかっていて、全体的に不健康な感じ。基本眠そうだが、歴史と家庭科以外はちゃんと受けている。彼の名誉のために言っておくが、その二つの授業で寝てしまうのはもはや仕方がないと思う。

 さて、これは彼ら四天王と僕が過ごした、何にも代え難い貴重な体験。気恥ずかしいが、青春の一ページと言っても過言ではない。


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