植物男子は肉食系!?

冬原水稀

プロローグ

 教室の窓から、優しい光が差し込んでいる。

 私は、この朝七時半の光が大好きだ。柔らかくって、繊細で。この時間に教室に来るには、みんなよりちょっと早起きしなければならないけれど、そんなことも気にならないくらい。

 廊下に、一人。

 この時間は、私と植物の時間。じゃーーっ。じょうろに水を汲んで、教室で育てている植木鉢へ運ぶ。この役割は、特に私の役割って決まってるわけじゃない。でも私は花が好きだから、進んで水やりをやってるんだ。


「んっしょ」


 少し、重い。けれどあと、もうちょっと。窓際に立てば、青々とした葉っぱたちが、ご飯はまだかと、きらきら私を見つめているいつもの風景が広がっている……はずだった。

 その手前で、私は立ち止った。



 窓際に、知らない男の子がいる。



 こちらに背を向けたその髪は、とっても柔らかい枝色だ。だ……誰? あんな髪色の子、私のクラスにはいなかったと思うんだけど。

 すると、くるり。彼が、こちらを振り返って。

 ……! とっても、きれい。そう、思った。日の光に抱かれた淡い肌色に、さらさらの髪がぴったりで。鼻筋も通っていて、カッコいい。そして何より目を引くのはその瞳! 外国人の子なのかな、まるで朝露に濡れた葉っぱみたいに、優しい緑色をしている。


「だ……誰?」

「みどり?」


 穏やかな声が呼ぶ名前。どうして私の名前を? そうだよ。私はみどり、手塚みどり。他のミドリさんのことを呼んだ……わけじゃないよね? ここには私しかいないし。

 私がどぎまぎしている内に彼はどんどんこっちに近づいてきた。え、え、何で? そして目の前まで来ると、じょうろを持った私の両手をそっと包み込んで。

 え、えっと私、男の子に手を握られ……っ!?


「見つけた」


 何もかも置いてけぼりなのに、その子は。



「見つけた。……ぼくの、最愛のひと」



 終いには、そんなことを言い出した。

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