第52話 ミゼント村出発

アーレル達の出発の前日、アーレル達が冒険者ギルドから宿屋に帰ると、職員がギルドマスターの元に来る

「セリーナちゃん達の要求の魔導書ですが…中級から上級の魔導書を選んでいます…フィーネちゃんも相当な実力と思います…中級魔導書を読んでミーナさんと内容をしっかり話し合っています…あの歳であの理解度…本当に天才と思いますが…ミーナさんは何者ですか? 」

職員が心配そうにギルドマスターを見ている

「上級魔導書を欲しいと言うとは…アーレル殿の娘なら仕方無いのか? ビレット殿の妹だから…」

ギルドマスターが考えている

「本当にDランクのままにするのですか? 並みの魔法使いと思えません」

「並みの…Bランククラスと思った方が良いのか? しかしランクアップ拒否されているし…アーレル殿を説得出来るか?」

ギルドマスターが考えながら職員を見ている

「子供を迷宮に連れていく迷惑な冒険者です! 子供を迷宮に連れていかないように言って下さい!」

職員がギルドマスターを見ている

「あのアーレル殿に何を言っても無駄だろ…保護者がアーレル殿なら迷宮内でも安全なのかも知れないが…」

冒険者ギルドマスターが考えながら呟くと、職員が睨んでいる

(少しは周囲の影響を考えてください! 迷宮が子供の遊び場になったら大変な事になります)


別の職員が部屋に来る

「ギルドマスター、訓練場ですが…本当にアーレルさんに貸して良かったのですか?」

職員が心配そうにギルドマスターを見ている

「時間稼ぎ出来たなら良いだろ?」

「時間稼ぎ…冒険者が自信を無くし、もう誰も訓練場を覗きに行きません…アーレル殿の子供虐めを止めさせてください」

職員が必死に説明している

「子供虐め? 鍛練だろう? アーレル殿は迷宮主を倒す実力があるのだから…アーレル殿は異常な実力者だ…問題でも?」

ギルドマスターが苦笑いして職員を見ている

「問題?子供相手でも容赦なく弾き飛ばして、骨が折れる様な重傷になります…回復魔法で回復させても…子供達も容赦無くアーレル殿に立ち向かい…剣の速度も異常です…本当にDランクなのですか? Bランクの冒険者でもあの速度あり得ません」

職員が必死に説明しているとギルドマスターが頭を抱えている

(子供達の実力? セリーナちゃんが成人するまで本当にDランクのままで良いのか? あの化物の子供だから…全員ビレット並の実力者になるのか? 今後どんなトラブルを引き起こすのか? 段々恐ろしくなってきたぞ…)


出発の日の朝、アーレル達が荷物を馬車に乗せている

「間に合ったか?」

鍛冶屋の主人が袋を持ってやってくる

「世話になったな」

アーレルが鍛冶屋の主人を見ている

「最後に会いに来る気無かったのか? これも渡せてないぞ」

鍛冶屋の主人が笑いながら袋をアーレルの前に置く

「ん? 何か頼んでいたか?」

「餞別だ! 旅には鍋やナイフも必要だろう? その子達の短剣も作ってある! 」

鍛冶屋の主人が笑顔で言うと、リーシアが袋を開けて中を見てからアーレルに見えるように袋の中を見せている

「重くなかったか?」

アーレルが呟くと、鍛冶屋の主人が爆笑している

「鍛冶をしていれば、力もあるぞ! 重たいがな!! 遠慮なく持っていけ」

鍛冶屋の主人が笑いながら言うと、ラドルスとケントが袋を持って馬車に乗せている

「片田舎だが、用が有ればまた訪ねてこい!」

鍛冶屋の主人が笑顔で言うと、道具屋の主人がやってくる


「アーレルさん、間に合って良かった」

道具屋の主人が苦笑いしている

「見送りか? ありがとう」

アーレルが笑顔で道具屋の主人を見ている

「やっぱり…忘れ物です」

道具屋の主人が袋を差し出す

「何だ? 」

アーレルが袋を見ている

「代金です。あれだけのポーションを作って忘れていたのですか?」

「ポーション? 代金か? 忘れていたぞ」

アーレルが笑いながら言うと、ミーナが呆れたようにアーレルを見ている

「娘さん、アーレルさんに忘れないように言ってくれ」

道具屋の主人がミーナを見て言う

「御父様ですから、あの程度の事はすぐに忘れます…サリー御姉様の時も代金を受け取らず帰ってきて、サリー御姉様が怒った手紙を送ってきました…御父様は一言、サリーが受け取れば良いだけだと、手紙を返してましたが…流石に怒ってサリー御姉様が帰ってきて、金貨の袋を投げ付けて受け取らないと毎月金貨を送ります!! どっちが良いですかと、怒ってました」

ミーナが笑いながら言う

「金貨1000枚有りました! それでね、金貨の袋をそのままミーナお姉ちゃんに渡して、旅支度に使うように言ってました」

セリーナが笑いながら言う

「大金必要ないなら、売らなければ良いのに…作る方が好きなだけなんて…御父様ですから金貨も忘れているのでしょうけど」

ミーナが呆れたようにアーレルを見ている

「セリーナが成人したらあげるぞ」

アーレルが笑顔で言うと、流石に道具屋の主人が呆れたようにアーレルを見ている


アーレル達が馬車に乗り、村の出口に向かうと、馬車と冒険者達が集まっている

「アーレルさん!! もう少し待って下さい」

冒険者ギルドの職員がアーレル達を見て言う

「待たせるのか?」

アーレルが馬車を降りて言う

「冒険者ギルドに寄らないで行こうとしてませんか? ギルドマスターと賭けをしましたが、勝ちです」

職員が笑顔で言うと、周囲の冒険者達が笑っている

「勝ち? 賭けを? 冒険者ギルドは何をしているのか?」

アーレルが呆れたように呟く

「兎に角待っていて下さい!!」

職員がアーレルを睨み言うと、ミーナ達も馬車を降りている


冒険者ギルドマスターがやってくると、職員が紙の束を持ってくる

「アーレルさん、この手紙を向かう先の冒険者ギルドに渡して下さい…昇格したくないと言っている内容などが記されています」

ギルドマスターが笑顔で説明している

「ミーナさん、こちらは向かう先に行く間の討伐依頼です。 時間が有れば討伐して下さい…後で面倒事にならないように先に渡しておきます」

職員が笑顔でミーナに紙の束を渡している

「御父様の狩りの役に立ちますが…範囲外の依頼も集めたのですか?」

ミーナが紙の束を見ながら言う

「知らないで森に入らない為に必要です。 この先の冒険者ギルドも、イキナリあの魔物の山を持ち込まれるよりは良いです」

職員が笑顔で説明している


アーレル達が馬車に乗り他の冒険者達も馬車に乗ると、村を出て進んでいく

「これで仕事が減るな」

ギルドマスターが馬車を見送り呟く

「あれだけ冒険者を付ければ、途中盗賊にも襲われないでしょう」

職員が笑顔で見送っている

「盗賊に襲われる? 盗賊を襲うの間違いだろ? 返り討ちで捕まった盗賊の処分の方が大変そうだからな… それに魔物を襲う事もしないで欲しいが…2度と会わないだろう…」

冒険者ギルドマスターが苦笑いすると、職員達が口々に愚痴を言っている

(子供を迷宮に連れていく、常識知らずの冒険者は2度と来ないで欲しい! もう顔を見たく無いです!!)

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