第2話 最強魔王様の早朝パトロール


 我は最強の魔王

 髪の毛一本が聖剣エクスカリバーよりも固く鋭い最強魔王だ。


 そんな最強の我ではあるが、日本と言う勇者召喚筆頭の島国に来てからと言うもの、毎日慌ただしい日々を送っている。


 全く持って遺憾な事だ。

 何故にこの島国でこうも勇者召喚されるのか。

 まぁそれは良い。

 それは良いのだ。

 我にとっては日本と言うこの島国に、勇者召喚が集中していることはありがたいことこの上ないからな。


「今日も張り切って人間共に絶望をくれてやるわ。くっくっくっくっ」


 邪悪な笑みを浮かべながら我は行く。

 朝日の出ていない早朝に我は行く。

 旗振り棒を片手に。





「ま~さんや。おはようさんじゃのぉ。今日もご苦労様じゃ」


「うむ! 元気そうだなジジイ! こんな朝早くから徘徊とはご苦労な事だ! ここからは根性が社畜に入ったトラック野郎が良く通るようになったから、気を付けて通られよ。事故って勇者召喚などされるでないぞ!!」


「しゅうしゃしょうかん? 相変わらずま~さんの言ってることはわからんが、ありがとののぉ~」


「おう、転ぶでな・・危ないぞジジイ!」


「むにゃ?」


 注意したにも関わらず、ブロロロロと走るトラックの前に飛び出そうとしたジジイ。

 魔王はすかさず世界の時間を制止させ、ジジイを抱え助ける。

 ついでにジジイを引き殺しそうになっていたトラック野郎の目元に、隈が生えていたので、疲労が蓄積されていると判断した魔王は、疲れを吹き飛ばすリフレッシュの魔法をかけておいた。

 これで早々事故ることもあるまい。


「気を付けろと言っておろうがジジイ! 道路を横断する時は右見て左見て、また右見て、手を上げなければいかんのだぞ!」


「おぉ、おぉ、すまんのぉ。転びそうになったわい」


「誰もそんなことは言っておらぬ! たく、しかたのないジジイだ。特別に守護の魔法をかけてやる。これで早々に危険な目に合うこともあるまい」


「お~お~、すまんのぉ。すまんのぉ。ちょっとそこまで行ってくるからの。ばあさんや」


「ぬ? 我はババアではないが・・・まあよい。うむ、気を付けて徘徊するのじゃぞ! さて魔王もパトロールの再開である!!」


 そんな感じで最強魔王様は、日の出の出ていない時間帯をあっちへテクテク、こっちへテクテクと街のパトロールする。

 いつ何時、勇者召喚が訪れないとも限らない故、毎朝こうやって警戒しているのだ。



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