第10話:社畜、フェンリルと一緒に初配信をしてみる。あ、あれ?テスト配信のつもりがすごい人数きたんだけど!?


「えーっと、配信機器をこうセットして……おお、いい感じだ」


 金曜日。俺は朝倉さんからのアドバイスを実行するために、会社帰りに閉店ギリギリで買った配信機材を説明書を見ながら庭でセットしていた。


 朝倉さん曰く、配信をするなら「テクノロジア」と言うダンジョン三大企業の一角が一番高性能かつ扱いらしいらしく買って見たが、どうやらそれは間違いないらしい。

 

 正直そんなに機械に強くない不器用な俺ですら説明書を見たらあっという間に準備完了できたんだから。いやー、ちょっと高かったけど買ってみてよかったなぁ。


「くーん?」


 どうやらフィルも新しく買ったこの機材が気になっているらしく、機材の周りをウロウロしながら物珍しそうにしている。


「フィル、これはお前のカッコ可愛いところを撮影するための機械だ。うまくいけばたくさん美味しいご飯を食べられるかもしれないぞ」


「ワワワワン!? ワンワンワンワンワン!」


 お、こいつ美味しいご飯というワードに反応して尻尾フリフリ、舌を出してはすごい笑顔になっているぞ。やっぱりフィルって俺の言葉を理解しているんじゃないか?


 本当に賢いやつで最高だなお前は!


「おーよしよし。落ち着け落ち着け、まだ確定ではないからな。気長に頑張っていこうな、俺も色々頑張るからさ」


「ワン!」


 まぁ、そもそもそんなうまくいくとも実は思っていない。残念ながら俺は社畜、朝倉さんから話を聞いた火曜から即日で実行することはできずに結局金曜まで伸びてしまった。


 きっと多少あの掲示板の勢いも落ちて俺たちの話題性もなくなってきてはいると思う。でも、朝倉さんがめちゃくちゃ配信してほしそうにしてるし、多少生活の足しになるかもしれないからやることにしたんだけど。


 で、今日はテスト配信ってことで配信機材に問題がないとか確かめるためにテスト配信をする。視聴者は朝倉さん1人の予定だ。さすがにいきなりたくさんの人が来ることもないだろうし、いっぱいきたら俺が緊張する。


「そろそろ始めるか。よいしょっと、これでカメラついたかな。フィル、こっちおいで」


「わん」


 家の中を写すのは恥ずかしいので庭で配信をすることにした俺は、セットしたカメラをオンにしてフィルをこっちに呼ぶ。


 すると本当に賢いフィルは忠犬ハチ公のように凛々しく座ってくれた。動画映えすら理解しているのかこいつは!? 


「よし、カメラつけたから次は朝倉さんに配信URLを送ってっと……。返信早!?」


【バッチリフィルちゃん映ってます! 明るさも問題ありません! それじゃあこのURL掲示板に貼り付けますね!】


 おお、よかったよかった。フィル大きいから写りきらないんじゃないかと思ったけど問題なさそうだ。それに庭にライトを置いたおかげで夜でもバッチリフィルの可愛くてかっこいいところを写せる。


 よーし、機材も問題なさそうだし今日はテキトーに朝倉さんと喋るかぁ……………んっ!?


 ちょ、ちょっと待った!? 


———

「本物?」

「フィルじゃんやば!?」

「配信してるぞフィルが!!!」

「飼い主もいる!? やばっ、近くで見たら結構かっこいい!!」

「飼い主スーツ姿で草」

「マジで本物じゃんwwwwww」

「掲示板もたまにはやくに立つんだなwwwwww」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「フィルちゃんドヤ顔してて可愛すぎわろた」

「フィルちゃんどっしり構えてるのに飼い主慌てふためいてて草」

———


 おいおい、どういうことだ!? いきなりコメントがバーって流れ出したと思えば同時接続数だっけ? 配信を見てくれる人の人数が1、10、100、1000……3000人きてるんだけど!? え、待て、しかも勢いが止まらないぞ!?


 あ、そうだ! さ、さっき朝倉さん「掲示板にURL貼っときますね!」って言ってた……ま、まさかそれでこんな人がたくさんきたのか!? ど、どうなってんだよこれ……。ど、どうしよう、俺は一体何をすれば……。


「ワンワン」


「フィ、フィル?」


「ワン」


 あまりに突然のことに慌てふためいている俺を察したのか、フィルは前足をポンポンと俺の身体にタッチして、「落ち着け」と言わんばかりに凛々しく俺のことを見つめてくる。


 そうだ。そうだよな。俺はフィルの飼い主なんだ。俺のせいでフィルがカッコ悪いとか思われちゃ嫌だし、ダメだよな。いい大人らしく、ここはしっかりと対応していきますか!


「ありがと、フィル」


「ワンワン」


———

「おいおい今の見たか? 友情すごくね?」

「フィルちゃんかっこいい……それに飼い主さん慌てふためいてたの可愛いw」

「フィルカッコよくて草」

「何この信頼度マックスの関係性。普通の関係じゃないだろこれ」

「飼い主さん笑顔でフィルちゃんの頭撫でてる……可愛い」

「フィルちゃあああああああああああああああん最高おおおおおおお!!!」

「ヤベェ、これだけ見てるだけでも満足すぎる」

「尊い」

———


「こ、コメントの勢いすごいな……。あ、そうだ。皆さんに挨拶してないな。初めまして、今日から配信を始めた……そうだな、社畜です。こっちは相棒のフィル。どうぞこれからよろしくお願いします」


「わん!」


———

「社畜草」

「確かに目が若干死んでるw」

「でもちょっとダンディーな雰囲気が素敵!」

「フィルちゃんのこと相棒って言ってる! 本当に素敵な関係!」

「フィルドヤ顔ずっと続けてて草」

「え、無理、待って。この2人をこれから配信で見られるとか神?」

「丁寧で草」

「フィルを俺たちの代わりにもふもふしてくれ!」

———


「モフモフ……あ、いいですよ。フィル、触っても平気?」


「ワンワン!」


「おお、フィル!? お前積極的だなぁ!」


 どんときやがれ! なんて言いたげにフィルは俺の方に寄ってきて、むしろ俺がフィルのモフモフに飲まれるかのようにじゃれついてきた。こいつ、もしや取れ高というものも理解しているのか!?


———

「可愛いいいいいいいいいいいいいいい!」

「すまん、素直に笑顔がこぼれた」

「飼い主あの巨体を受け止めてて草」

「慣れてるんだろw」

「私もあのモフモフに飲み込まれたい……」

「私は飼い主さんを飲み込みたい」

「変態おって草」

「スパチャ送りたいんだけど、収益化まだ?」

「やべぇ、癒されすぎて明日も頑張れるわこれ」

「どうかこの2人の姿をこれからもずっと見れますように!!!」

———


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