第2話 ひとりぼっちになりました
「う、ううっ・・・ううう・・・」
古ぼけた床屋の2階で男の子が泣いていた。位牌を握りしめながら・・・。
「ど・・うし・・て・・お・・じい・ちゃ・・・ん・・・」
男の子の目から、涙がぽろぽろこぼれた。
男の子の名前は、しょうすけ。小学4年生。
小さい頃に両親を亡くし、祖父である床屋に引きとられた。
ほかに親族はいない(はず?)
お墓はあったし、近所に人に助けてもらって葬式もあげられた。
生前、祖父がすべて手配してあった。
「・・これ・・から、どう・・すれば、いいん・・だろう・・・」
しょうすけが鼻をチーンとかんだ時だった。
「おい、おまえ・・」
誰かの声が聞こえた。
「えっ?誰?」
しょうすけは部屋の中をみまわしたが、誰もいない。
「おかしいな・・・。おっさんみたいな声だったけど・・・」
『外に誰がいるのか』としょうすけは、窓のほうへ行こうと立ち上がった。
「おっさんとはなんじゃ!小僧、ここだ、ここだ!」
「えっ?」
しょうすけは声のするほうへ振り返った。そこには飼育箱があった。
「・・・カブトムシ・・なわけないし・・」
「そのカブトムシだ!」
しょうすけは、飼育箱の中を『ジィ~~~』と見た。そこには前足をもぞもぞ動かしているカブトムシがいるだけだった。
「・・ただのカブトムシじゃん!」
「ただのではない!私は魔法使いだ!!」
カブトムシが立ち上がった。
「カ、カブトムシが立ったぁ~!」
しょうすけは後退った。
カブトムシはえらそうに腕を組んだ。(注:口は動いてない)
「ふふっ!ただのカブトムシではない。魔法使いのカブトムシだ!」
「う、うそ・・・」
「うそではない。普通のカブトムシは猫だって長く生きれば、猫又になるであろう。」
「じゃ、じゃあ、カブトムシのおじさん、妖怪なの?」
「妖怪ではない!魔法使いだ!それとおじさんではない!」
「えっと、何歳?」
「ざっと80年と3年・・・」
「・・・おじい・・ちゃん?」
「なっ!・・・おじさんでよい・・」(いいのか!)
カブトムシは、床屋のおじいさんからしょうすけのことを頼まれていたと話し、これからの生活について説明を始めた。
驚きすぎて『もう、なんでもいいや』と考えることを停止したしょうすけだった。
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